A Memory 第二章
□第26話・慈悲深き皇帝
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―マルクト宮殿―
謁見の間にガイは立ち、目の前の王座の椅子に座る男性を見据える。
その隣には、共にバチカルから来たジェイドが立っていた。
「お前か…俺のジェイドを連れ、なかなか返してくれない奴らの仲間は…」
「……は?」
男性から発せられた言葉にガイは目を点にする。
「陛下。今は冗談を言ってる場合ではありませんよ」
「何だ…。俺は結構真剣だったのに…」
食えない笑顔のジェイドに構わず、普通に返す男性…。この人物こそ、マルクトの偉大なる皇帝…ピオニー・ウパラ・マルクトである。
それをガイはちゃんと分かっているはずなのだが…どうもインゴベルトとは違う軽い調子のピオニーに、本当に皇帝か…?と疑ってならない。
「……生きていたとの報告を受けた時は驚いたぞ…ガイラルディア・ガラン・ガルディオス…」
が、さすがに皇帝…。
本題に入った途端、どこか逆らえない威厳のようなオーラを醸し出す。
それに、間違いなく本物だ…と疑いを晴らし、ガイは静かに頷いた。
「…はじめまして陛下。私がガイラルディアでございます…」
立っていた体を傾け、膝をつき、肯定の言葉を吐いて頭を下げる。
再び上げた顔には、伯爵としての稟とした表情を浮かべていた。
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