A Memory 第二章

□第31話・過去の涙
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ノイズの走った親善大使の声…


それを聞き、笑みする者…驚愕する者…青ざめる者と、皆が別々の顔をするのはなんと滑稽な…
その中で青ざめる者が多いのは、この国の『預言』への執着が強いことを伺える。

「……な、…なんということだ…」

玉座に座り青ざめているインゴベルトは同時に信じられん…と口を開く。
その階段下に涙を流し、嬉し気に笑みを浮かべる妻を抱き寄せているのはファブレ公爵ことクリムゾン。
普段の威厳ある顔立ちを歪ませ、今の彼は簡単に折れてしまいそうな酷く弱々しい顔をしている。が、流れ出そうな涙だけは正反対の…いつもの彼以上の強さを示しているようだった。

イオンがほっ…と息を吐く。


「…よくやって下さいましたルーク、すぐバチカルまで帰れますか?」

『……皆に若干疲労が伺えますが…大丈夫です』

「…分かりました。帰還をお待ちしております」


震える声を抑え、言葉を紡ぐイオン。

『絶対帰って来る』と信じ、けれども予言によって不安にさせられたルークの生還…


叶ったからこそ、涙が出そうになる。


喜びがそのまま涙として溢れていくかのように…




「やりましたね!イオン様っ!!」

「……はいっ!!」


喜びに思わず抱き着いて来たアニスにしがみつくように同じく抱き着くイオン。
抱き合っている態勢になり、そこでようやく二人は嬉し涙を流し始めた―――





「っ…どういうことですか導師イオン!!!?」


感涙を流す場には不釣り合いの怒声と戸惑いの小言…

『スコアは絶対だ』と信じるインゴベルトと上級のキムラスカ兵のものだった。

「スコアには…!!ルークのスコアを詠んだスコアラーには『今日 聖なる焔の光(ルーク)は死に マルクトとの戦争に勝ち キムラスカは繁栄する』と詠まれていたのですぞ!!」

「陛下…!」

「スコアラーの言っていたスコアは嘘だったのですか!!!?」

「!!」


これが…この国の現状…

スコアこそ真実と信じ、スコアこそがこの世界に定められた未来だと決め付けている者が頂点に立つ国…


人々は王の言葉をまた信じ、自然とスコアに執着してゆく――



「っ…違います!!ルークの死は確かにスコアに詠まれていました!!」

「では何故ルークは生きているのです!!先程の声はレプリカのものだったのですか!?今度こそ我々の動向を探ろうと…!!」


「!!その言葉、取り消しなさいッ!!!」


怒声を間近で聞いたアニスもまたインゴベルト同様体を強張らせる。





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