A Memory 第二章
□第31話・過去の涙
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いつも微笑みを浮かべ、温厚で優しきオーラを醸し出すイオン。
その彼がこれ程鋭く叫んだのは、いつも一緒にいたアニスでさえ初めて聞くものだった。
「ルークの死は…確かにスコアに書かれていました…」
未だ怒りを瞳に宿す。
導師イオンが優しいからこそ…
侮辱されたこの場にいない赤い髪の友人達の為に…
――怒る――。
「でもスコアは…絶対ではないんです!!言わば占いのようなもの…。『こんなことが起こるかもしれない…』ただそれだけなのです!!」
「…」
「インゴベルト陛下…貴方は『今日 聖なる焔の光(ルーク)が死ぬ』と言いました。スコアに書いてる…スコアラーに詠んでもらった…ただそれだけの理由で、何故ルークの命を諦めるのですか!?」
「…」
「そのスコアを信じ、知っていながらルークをアクゼリュスに行かせた…。それも許せませんが、スコアを覆して帰って来てくれて…そしたらスコアラーが嘘を付いただのアッシュがルークの真似をしただの動向を探る気だだの…!!」
「…」
「でも一番許せないのは、…その暴言をルークの御両親の前で吐いたことです」
「!!」
言われ、インゴベルトははっとファブレ夫妻を見る。
驚愕に青ざめ涙を流し、悲痛な顔をしている。
先程までの感涙がまるで嘘だ。
二人はただ、ルークが帰って来てくれる…
親なら誰でも喜ぶ当たり前のことを…
ただ喜んでいただけなのに…
まるでその想いを抱いてはいけないと言われたみたいで…
「…っ…しかし、スコアは!!!!」
なおスコアに執着を見せるインゴベルト。
今まで信じていたものをいきなり否定され、『スコアは占いのようなもの』というのを認めることが出来ないのだ。
そんな彼に意見したのは…
「――この期に及んでお見苦しいですよ…インゴベルト六世陛下」
イオンの声より低いものだった。