A Memory 第二章

□第31話・過去の涙
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謁見の間に現れた金髪の男性。
ジェイドとフリングスに挟まれ護られている辺り、彼がとても偉いことを匂わせる。


「…実際に顔を会わせるのはこれが初めてになるかな?インゴベルト陛下」


先程『見苦しい』と言った声で彼は――ピオニーは笑みを浮かべる。



「な、何者だ貴様は!!」

「インゴベルト六世陛下の御前なるぞ!!!」

いきなり現れたピオニーに警戒を見せるキムラスカ兵士。が、彼らはピオニーを護衛しているジェイドとフリングスに睨まれると言葉を無くし、グッと詰まる。

二人が軍人であると同時に突然現れた不意打ち。それがキムラスカ兵の思考を乱しているのだ。今は状況判断でいっぱいいっぱいである。

一方のインゴベルトもその人物の登場に目を開き何がなんだか分からなくなっていた。
ただ一つ理解したのは…

「……マルクトの皇帝…ピオニー・ウパラ・マルクト…!!何故貴様が此処に…」

ピオニーの名前と素性だけだった。


最後の言葉は独り言のように呟かれたが、ピオニーは律儀に答える。

「敵国のラスボスが突然現れたらそりゃぁ驚きましょう!ですが…私がせっかく書いた親書を無駄にされたのなら……直接私の口から和平の提案を出さない限り、貴方は納得されてくれない」

「そ、そんなことの為にそなたは敵国の…私の所まで来たというのか!?」

「『そんなこと』とは?平和を願うことが『そんなこと』なんて安っぽいことでしょうか?…それとも…またスコアを理由にして喋った言葉ですかな?」


―――完全不利。インゴベルトはそう思った。
さすがジェイドをも翻弄してしまうピオニー。口喧嘩で彼に勝てる者がいるならば是非見てみたい。





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