A Memory 第二章
□第32話・†
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アリエッタははっと目を開く。
「ガーちゃんっ!!」
今映っている深紅の髪の青年に顎を撫でられている友達のライガを。
彼等は犬や猫と同じで顎をゴロゴロと撫でられるのが好きだ。が、今見ている友人にはとてもじゃないが嬉しそうに喜んでいる様子はない。
明らかに…怯えた者の瞳…
自分より格上の者を前にした時の…本能で感じる『危機』に恐怖した目…
「このライガお前のか?コイツは子供だ…喰われたりしないのか…?」
「…っ、ガーちゃんは…アリエッタのお友達だもんっ」
「?…あぁ、そういえば魔物と会話が出来るんだったな」
クスクス笑いながらライガの顎から首を撫でる。
撫でるというより指先でなぞるような…静かで不気味なスキンシップ…
「っ!!ガーちゃんを虐めないで!!」
得体の知れない恐怖がアリエッタをも襲う。
それでも彼女は大切な友達を助ける為に声を張り上げた。
ゆっくりアリエッタに向き直る深紅。
「…悪い、別に虐めたかったわけじゃないんだ。……どうにも魔物相手じゃ殺気を抑えられない」
するりと触れていた手をあっさり離すと、ライガは勢いよく飛び出しアリエッタの背後に隠れる。
今だ震えるライガの身体…が、恐がらせていた本人は魔物が離れた為か先程までの殺気は微塵も残さず消し去っていた。
それどころか謝り出した為、アリエッタは困惑の表情を隠せない。
美しい深紅の髪が開いた窓から吹く風に揺れる。
雲から静かに漏れ始めた月明かりに照らされ…
「……るー…く?」
ようやくその姿がはっきりと見えた。