愛のカタチ

□コイゴコロ
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静かな曲が流れる店内


サービスも雰囲気も最高で、さすがに人気のレストランだけあるよな


予約取るの、すげぇー大変だった


アイツのコネを最大限使わせて貰って、やっと取れた予約


“馬鹿みたい(笑)和ってさ、高級料理とか訳分かんない料理苦手じゃん”


って、呆れた顔で笑ってたな


間違っちゃいねぇーけど……仕方ないんだよな(苦笑)


「二宮さん、凄いですね。このお店って、中々予約が取れない事で有名なんですよ」


目の前のちょっとキツイ感じの彼女が、そう言って嬉しそうに笑った


「知人のツテを使いまして……貴女がここで食事をしてみたいって言ってたのを聞いもので…」


取り引き先の受付の女の子


ちょっとキツイ感じだけど、すげぇ美人な女の子


同じ会社の奴もそうだけど、うちの会社の奴とか他社の奴


何人の男が彼女を誘って、フラれた事か…


人ってさ、絶対に無理って言われると、どうしても手に入れたくなる


こうみえても僕、かなり優秀で将来有望


その上、容姿端麗で優しい


試しに食事に誘って見たら、友達と一緒ならって返事


ふぅ〜ん……この僕を天秤にかけるんだ(笑)


僕と他の将来有望な男達を値踏みをして、1番お買い得な男に自分の将来を託すって訳ですね


僕、負けず嫌いなんです


それも、かなりのね


本当は他の男達と天秤にかけられたってだけでも、かなりムカついた


だったらこの女を手に入れて、僕に夢中にしてやろうって思った


とりあえず僕は、その彼女の恋人選びのレースにエントリーは出来た訳で


他の男達を出し抜くにはどうしたらいいかと考えていたら、彼女が友人と話してるのを聞いたんだ


この店で食事をしてみたいって言ってるのを


そこで思い出したのはアイツの事


確かアイツ、この店に…


「美味しそうですね、二宮さん」


目の前に運ばれて来た綺麗な前菜と、ちょっとお高いワイン


確かに美味しそう


美味そうだけど……やっぱり僕はお気に入りの、あの店のハンバーグの方が好きかな


食いたいなぁ……あの店の、チーズのハンバーグ


思い出したら急に食べたくなった


確か最後に行ったのは、一ヶ月前位かな…


アイツと一緒に行って、二人でハンバーグを食べた


僕はチーズので、確かアイツは煮込みハンバーグ


アイツ、すげぇ美味そうに食ってたよな



まっ、アイツはいつでも何でも、美味しそうに良く食べるけどな(笑)


対して面白くもない、彼女の話しを聞きながら食事をする


それにしても、よく喋る女だよな(苦笑)


食べる時位は、黙って食えばいいのに…


「二宮さんて、本当に彼女とかいないんですか?」


「えぇ、いませんよ」


「そんなに優秀でカッコイイのにですか?」


「僕なんて大した事ないですよ(笑)それに今は、仕事が忙しくて…」


そっ、確かに僕は優秀でカッコイイ


だから僕、凄くモテるんです


女の子から誘われたり、告白されるなんて日常茶飯事で


でも、いつも…


いつも肝心な所で邪魔が入る


この前は確か……そうだ、アイツがいきなり家に来たんだ


女の子を連れ込んで、これからだって時にアイツが酒とツマミを持ってやって来て


何でか知らねぇーけど三人で飲むって事になって…


俺がアイツが買って来た酒を冷蔵庫に仕舞って戻って来たら


女の子が僕の事を睨んで“最低”って言って、帰って行ったんだよな


アイツに“どうしたの?”って聞いたら、“知らない”って言って


美味しそうにビールを飲んでたんだよな


「二宮さんっ!私の話し、聞いてます?」


えっ?……あっ、聞いてなかった(苦笑)


「す、すいません…」


「私と一緒で、楽しくありませんか?何だか二宮さん、ずっと上の空ですよね」


確かに、楽しくは無いな(苦笑)


でもそんな事は言えないから、頭をフル回転させて言い訳を考える


その時、僕の携帯電話が震えて


そっとディスプレイを確認するとアイツからで


何でこのタイミングで電話してくるんだよっ


「………出ないんですか?」


「えぇ、大丈夫です」


嫌な予感がする


今、電話には出ない方が…


「出れないんですか?」


えっ?


「出れない相手…彼女とか……。だから私との食事も、ずっと上の空で…」


「僕に彼女なんていませんし……上の空じゃなくて、少し考え事を…」


「口では何とも言えますもんね」


ぶつぶつと文句を言ってる彼女


何かさ、もう面倒くせぇ


はぁ……って、ため息を着くと携帯を手に取って


「………和?」


小さなアイツの声


「どうした?」


「……もう…ダメ……動けない」


へっ?


もうダメって…


動けないって…


何があったんだよ



「おい、お前…」


「………死に…そう」


「へっ??ちょっと…」


電話、切れちゃった


急いでかけ直したんだけど、アイツは出なくて


マジで、何かあったのか?


でもアイツのマンションはセキュリティ万全だし


まさか何かトラブルに巻き込まれてたとか…


アイツ、馬鹿だし世間知らずな所もある


でも、この前会った時は何も変わった事は…


「私、帰りますね」


スッと立ち上がった目の前の彼女


「えっ?ちょっと待って…」


「電話の方が気になるなら、そちらに行ったらどうですか?二宮さん、ずっと私の話しなんて聞いてませんでしたし…」


お前が電話に出ろって言ったんじゃん


「あの誤解してませんか?電話の相手は…」


「別に電話の相手が誰かなんて、私には何の関係ありません…興味もありません」


そう言ってにっこり笑うと、彼女は帰って行った


………マジか


いや、別に彼女の事が好きだった訳じゃないし


ぶっちゃけ、今日一緒に食事して楽しくねぇし、面倒くせぇーって思ったよ


でもさ、何もしないで……手すらも握ってない


お前、ここの食事代……いくらか知っている?


その殆ど飲んでないワイン、いくらか知ってんのかよ…


その前に、この店に予約入れるのどれだけ大変だったか…


アイツに頼み込んで……あっ、アイツ


とにかく様子を見に行かないと


もう一度電話をかけてみたんだけど、やっぱりアイツは出なくて


僕は殆ど手を付けてないバカ高い食事の代金を払って、急いでアイツの家へと向かった
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