愛の瞬間

□ハッピーバレンタイン
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「良かったら、食べてもいいですよ」


そう言うと和は、釣り雑誌を読んでいる僕の横に可愛くラッピングされた箱を置いた


「シャワー浴びて来ますね」


バタンってリビングの扉が閉まる音がしたと同時に、僕は読んでいた雑誌を閉じた


バレンタインね


積み上げられたチョコの箱を、ツンツンって突っついてみた


……4、5、6……今日は6個


凄いよね


バレンタインデーは、もうちょい先なのに


昨日は3個持って帰って来たし


今日は6個


明日は何個持って帰って来るんだろう


毎年、毎年、この時期はちょっと憂鬱


和がモテるのは分かってる


だってカッコイイもん


時々凄く可愛いし、色っぽい時もある


ふんわり笑った笑顔に、ゾクゾクするような男の色気たっぷりな顔


演技は上手いし、曲だって作っちゃう


頭もいいから、トークの切り替えしも上手いし


ちゃんと回りが見えているから、仕切りだって出来ちゃう


「完璧過ぎなんだよ…」


もっとカッコ悪かったらいいのにな


そうしたら、僕だけの和になるのに


可愛いラッピングの箱をツンツン突っつきながら、そんな馬鹿みいな事を考える


「智、ビール飲みます?」


えっ?あっ…


いきなりキッチンから声をかけられて、ビックリした拍子に力が入っちゃって


可愛いラッピングの箱が崩れた


「び、ビール、飲みたい」


慌てて拾いながら返事をした時


一つの箱に目に入った
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