愛の瞬間

□愛の歌を歌おう 番外編
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寝室に響く、携帯の音


「誰だよ…こんなに早い時間に…」


今日は朝早くから、僕も智も仕事がある


携帯のアラームをちゃんとセットして寝たけど


この鳴り響いている音はアラームじゃなくて、着信を知らせる音で


もっと言うなら、アラームが鳴る前だから……かなり早い時間


こんな非常識な時間に誰だよって思うんだけど


多分、アイツ


いや、多分じゃない……絶対に、アイツしか考えらんねぇー


このままシカトを決め込むかと思ったんだけど


腕の中の智が小さく身じろいだから


小さなため息をつくと、サイドテーブルの携帯に手を伸ばした


起こしたら、可哀相ですからね


近頃、前にも増して忙しい智


昨日までずっと、ドラマの撮影があったし


新曲のレコーディングやPV撮影もした


もちろん、新曲関係の仕事は僕も一緒だったけど


智はその他に、新曲の番宣番組の収録に雑誌のインタビューに写真撮影も何誌かした


飛び入りの仕事も入って、翔さんが申し訳なさそうに智に伝えた時は


ふにゃんと笑って、大丈夫だよって言って引き受けていたな


だから出来るだけ、ゆっくり出来る時はそうしてあげたくて


朝もギリギリまで寝かせてあげたいのに…


携帯を手に取ると、やっぱりアイツで


はぁ……って、ため息を着くと


「おっはっよ〜ニノ♪後ね、15分位で着くからさ…」


何でお前は、朝からそんなテンションが高いんだよ


「相葉さん、1時間後に、また電話して下さい。じゃ〜お休みなさい」


そう言って、電話を切ろうとしたら


「ちょ、ちょっ待ってよ。1時間後にまた電話って何だよっ」


「アラームをセットした時間です。こんな時間に電話なんてして、早過ぎなんですよ……智が起きてしまいます」


「えっ?だって……智くんに頼まれたんだよ。この時間に起こしてって…」


えっ?


智に……頼まれた?


にゅうって伸びて来た手が、僕の携帯を取って


「……もしもし…相葉ちゃん?……うん、うん…大丈夫だよ。んふふ、ありがとうね」


まだ眠そうに、目元をコシコシしながら話す智


「うん、待ってる」


電話を切ると、僕に携帯を返して


「おはよう、和」


僕の首に腕を回して、ちゅうってキスをした


「おはよう…ございます」


「相葉ちゃん達が来ちゃうから、早く着替えちゃおうよ」



「えっ?あっ、はい………あの…智が頼んだんですか?」


ベッドから降りようとしている智の腕を掴んだ


「ん、何が?」


「こんなに早く、起こしてくれって」


「うん、頼んだよ。それと、朝食用にパンも頼んじゃった」


「どうしてですか?」


「だって和、頼んでも早く起こしてくれないじゃん。だから相葉ちゃんに、早く起こしてって頼んだの」


確かに近頃、智を起こすのはギリギリだった


早く起きて、一緒に朝ご飯の準備したいとか


ご飯の片付けをしたいとか言うんだけど


疲れているだろう智をゆっくりさせたくて


ギリギリまで寝かせて、急いで朝食を食べさせて


智が着替えている間に、僕が朝食の片付けをする


夕食も帰りに適当な物を食べて帰ったり


コンビニなんかで買って済ませていた


たまに自炊する時も、智が仕事中に買い物を済ませて


家に帰って全て僕一人でしていた


「和の気持ちは分かるし、嬉しいよ。でもね、僕は和と一緒に普通の事がしたいの」


「普通の事?」


「一緒に買い物したり、一緒に料理したり……料理って言っても、僕はお手伝いしか出来ないけどね」


「そんな事は…」


「あるよ(笑)それと、葱ジャンケンも家事ジャンケンもしたい。和とワイワイ言いながら普通の事をする事が、僕は楽しくて大好きなの」


そう言えば、前にもそんな事を言っていたな


「だから和、僕に気なんて使わないでよ。それに僕だけじゃなくて、和だって大変でしょう?」


「いえ、そんな事は…」


「んふふ、知ってるもん。和個人の仕事が結構来てるって……雑誌のグラビアの仕事も、決まったんでしょう?」


「えぇ、まぁ…」


前に智の写真を撮ったカメラマンが、僕を撮りたいって正式に申し込んで来た


前の時はマネージャーだからって断ったから諦めたみたいだけど


僕が今はタレント業もやっているって知って、申し込んで来た


あまりにも熱心に頼むから、仕方なく引き受ける事にしたんですよね


「翔さんに聞いたんですか?」


「うん。でね、僕から翔くんにお願いした」


「お願い?」


「和がその仕事をする時は、僕が和のマネージャーをしたいって……だからその写真撮影の日は、僕をオフにしてって頼んだんだ」


事務所を移籍してから、ちゃんとしたオフが取れていない智


「いいんですか?」


「何が?」



「せっかくのオフを、そんな事で使ってしまって…」


「そんな事じゃないもん。大好きな和の事だし、ちゃんと僕がチェックしないとだし…」


「チェック?」


「あんまりカッコイイ写真とか、色っぽい写真だったら僕、直ぐにNG出すからね」


「えっ?」


「だって見せたく無いんだもん。カッコイイ和も色っぽい和も……これ以上和の人気が出たら、嫌なんだもん」


智と一緒に歌番組に出たり、雑誌に載ったりしたからか


ちょいちょい、事務所に僕の問い合わせがあったり


智のラジオに、僕のファンからのメールが来たりしていて


智はそれが、ちょっと面白くなくて


でもちょっと嬉しくて、誇らしいって


凄く複雑な顔で言ってたのを思い出した


「ごめんね、ヤキモチ妬きで…」


僕にぎゅうっと抱き着く智


「こんなにも僕の為に色々して、いつも僕と一緒に居てくれるのに……まだまだ僕は、和を独占しようとして…」


ふふっ、何を言ってるんだろう


「僕は、嬉しいですよ。貴方になら、僕の全てを独占して欲しい」


ぎゅうっと智の身体を抱きしめて


「でも、心配しなくて大丈夫ですよ。もう僕の全ては貴方が独占してますから……それに謝らないで下さい。僕も一緒ですから」


「えっ?」


「僕なんて毎日、ヤキモチ妬いてるんですよ」


「毎日?」


「えぇ、智のドラマの相手役とか、バラエティーで共演してる人とか……貴方のファンにもね」


「ファンにも?」


「えぇ(笑)でもあまりヤキモチ妬き過ぎると、貴方に嫌わちゃいますから我慢してます」


「んふふ、大丈夫なのに。和がヤキモチ妬いてくれたら僕、凄く嬉しいよ。だってそれだけ、僕を愛してるって事だもん」


智は嬉しそうに笑いながら


「僕が和を嫌う訳ないじゃん。だって僕も和に独占されたい……独占される事が嬉しくて堪らないんだから」


「ふふっ、僕と貴方は一緒ですね」


「うん、一緒だね」


二人で顔を見合わせて、クスクス笑った


「着替えましょうか?」


「うん、相葉ちゃん達来ちゃうもんね」


ちゅうってキスをして、僕達はベッドを下りた
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