愛のカタチ

□Bittersweet
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「ニノ、悪い。イライラが収まんねぇーから、トイレ行って顔洗ってから楽屋に行く」


「あっ松潤、俺もトイレに行く♪俺の場合は、ションベンだけどね。もうね、ずっと我慢しててさ…」


「……お前のその報告、いらねーから」


少し呆れ顔の潤くんと、テンション高く笑ってる相葉さんと別れて楽屋に急ぐ


あーっ!マジでムカつく


アイツの……あのプロデューサの、人を見下した様な笑い顔を思い出して苛立つ


やっぱり我慢なんてしないで、文句のひとつでも言ってやればよかった


そんな事を思いながら歩いて、もう楽屋の扉は目の前


とにかく、今日は飲んでやる


「うわっ!!痛ぇ…」


怒りに任せて勢いよく楽屋の扉を開いて入ったら、何かが僕の身体にぶつかった


えっ、何?…人?


僕の目の前には、尻餅を着いている……男、だよな?


ちょっと小柄で幼い顔してるけど、男に間違いはない


「……痛い」


キッと、僕を睨むように見上げる男


「すい…」


ん?ちょっと、待て


慌てて謝ろうして、ハッとした


ここって、僕らの楽屋だよな?


僕らの楽屋に、何で見た事もねぇー奴がいるんだよ


「智くん、大丈夫?」


えっ?


もう一人、居る


中に居たもう一人の男が、尻餅を着いてる男に駆け寄った


コイツも…誰?


あれ?でもコイツの顔、何処で見た事がある


大きな瞳に、ぽってりとした唇


何処だっけな…


「痛いって言ってんじゃん」


尻餅を着いてる奴の言葉に、ハッとした


やっぱり僕を睨むように見ている、尻餅の奴


「あっ、すい…」


謝ろとしたのに、尻餅を着いた奴は立ち上がりながら


「人にぶつかったのに、謝ったり心配したりしない訳?テレビだといつも、優しそうな顔で笑ってるのにさ…」


“カメラ目線で笑ってよ。得意でしょ、アイドルなんだからさ(笑)”


さっきのプロデューサの言葉が浮かんだ


「ちっせぇーから、気が付かなかったんだよ(笑)てか、お前ら誰?何で僕らの楽屋に勝手に入ってんだよ」


尻餅着い奴は、睨んだまま顔を少し僕に近づけると


「お前だって、小さいじゃん!!」


「はぁ?」


「翔くんよりも、お前の方が小さいもん!」


コイツ、僕に喧嘩売りやがった


「ちょっと智くん、言い過ぎだから…あの、すみません」


もう一人の奴が、申し訳なさそうに謝る



「何で翔くんが謝るの?僕、間違った事言ってないし……この楽屋だって、勝手に入ったんじゃないじゃん!そっちのマネージャーがさ…」


僕らのマネージャー?


「ニノ、どうかした?……って、コイツら誰?」


入口に立っている僕の後ろから、潤くんが楽屋の中を覗き込む


「知りません。でも気に入らない奴だって事には間違いありませんね」


「それは僕も一緒だもん!!それに加えてあんたは、優しくなくて失礼な奴じゃん」


あーっ!コイツ、マジでムカつく


一応、僕は謝ろうとはした


それも、二度もな


タイミングがずれたのと、お前のその挑戦的な態度で謝ってはねぇーけどさ


「確かにに気にいらねぇーな。てかさ、人の楽屋に勝手に入っといて、優しくないとか失礼って……お前ら、何?」


あっ、潤くん怒ってる


仕方ねぇーよな、僕も潤くんも今日は元々すげぇ苛立ってたし


「ねぇ、ねぇ、松潤、何か揉めてんの?」


そう言って、ひょこっと顔を出したのは相葉さん


「コイツらが、俺らの楽屋に勝手に入って、訳の分かんねぇ事を…」


「あっ、櫻井さんと大野さんだ♪」


へっ?!


相葉さん…コイツらの事、知ってるの?


「……相葉さんの友達ですか?」


「違うよ。これから一緒に頑張って行く、メンバーじゃん」


へっ?メンバーって……あっ!!!


この前社長に言われたんだ……二人メンバーを追加するって


他の芸能事務所から来る二人を、僕らのグループに入れるって


「僕、断りましたよね?絶対に嫌だって……訳の分かんねぇー奴と組むなんて、死んでも嫌だって」


「俺だって断ったぜ。そんな訳の分かんねぇー奴らと組むなんて、絶対にごめんだって!わざわざ必要の無いお荷物を抱え込みたくねぇーってな」


そうだった……そう言って僕と潤くんは社長室を出て行ったんだった


「社長言ってたよ、拒否は認めないって。もう決定した事だから、絶対に従って貰うからアイツらに言っておけって……あれ?俺、言ったよね?」


「「言ってねぇーよ!!」」


綺麗にハモった、僕と潤くんの声


この、あいばかっ!


お前そんな事、一言も言ってねぇーじゃん


あれから社長なにも言わねぇーから、その話しは無くなったと思ってたのに…


ん?


「相葉さん、何でコイツら…じゃなかった、この人達の事を知ってるんですか?」



初対面じゃねぇーの?


「DVD貰ったじゃん」


「えっ?」


「櫻井さんと大野さんのDVD……ん?あっ!」


バタバタと楽屋の中に入って行って、自分の荷物をの所へ行った


ガサガサとバックを漁って…


「えへっ♪ここにあった(笑)」


「「えへっ♪じゃねぇーよ」」


また、綺麗にハモった僕と潤くんの声


「ぶっ、あはははっ(笑)コントみてぇー」


いきなり笑い出したのは……櫻井さん?大野さん?


どっちだよっ!!


とにかく、尻餅を着いていない方


「翔くん、笑ったら失礼……んふふ、あはははっ(笑)でも本当にコントみたいで、可笑しいよね」


尻餅を着いた奴も、顔をクシャクシャにして笑ってて


………へぇ…コイツ、笑うと案外可愛いじゃん


……んっ?!


へっ?今、僕……何て思った?


このムカつく奴を見て……可愛いって


「すいませんっ!ちょっと席を外してまして……二宮さんに松本さんに相葉さん、いきなりなんですが…」


すげぇ勢いで走って来たのは、僕らのマネージャーで


「ん?どうしたんですか?」


入口の所に立っている僕と潤くん


「楽屋に何か……あっ!櫻井さんと大野さん、どうしたんですか?」


尻餅を着いてる奴と、その隣にいる奴の所に駆け寄る


「大丈夫ですか?」


「えっ?あぁ、大丈夫です。大丈夫だよね、智くん」


そう言って寄り添ってる奴は立ち上がると、尻餅を着いてる奴の前に手を差し出した


尻餅を着いてる奴……えっと、智くん?だっけ


とにかく、その智くんって呼ばれた奴は、チラッと僕を見ると


「……大丈夫だよ」


差し出された手を掴んで立ち上がった
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