ばらかもん

□川藤×先生
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【叶うなら】

半田が館長を殴って島流しの刑に処されることになった。
アイツとは中学んときからの付き合いで、何だかんだ今まで親友やってきた。

人付き合いが極端に苦手で、書道の練習や書展でろくな遊びも知らない。
おかげで半田の友人と呼べる存在は俺だけ。
俺も半田に書を書くように勧めてきたから、そのことに対して責任を感じている半面、アイツを独占しているような優越感も確かに感じている。

「お前さ、離島で生活なんてできんの?」
「できるよ!すげー良い書を書いて、館長と親父を見返してやるんだ。」

島での生活は人と人との繋がりが大切だとか聞いた。
まぁ過保護な半田の親父さんが行き先を決めたなら、悪い場所じゃないとは思うが…

「ん…どうしたんだよ川藤?」
艶のある黒髪に触れれば、不思議そうな表情の半田が俺を見上げる。
ほら見ろ、コイツはこんなにも無防備で世間知らずだ。
俺が半田をどういう目で見てるかも気付いてない。
たった一人で見知らぬ土地へ行って、無事に帰って来れるか不安で仕方ない。

「心配してんだバカ。…一緒に行ってやれなくてすまん。」
「お前が来たら罰にならんだろ。」
「はは、確かにな。」

複雑そうな笑顔でいつまでも髪や頬を優しく撫でる川藤に、なぜか胸がきゅうっと締め付けられる。

「川藤、大丈夫だから。そんな顔するな。」
「…俺が大丈夫じゃねーんだよ。」
「え、?」

半田に触れていた手を後頭部に回し、グイっと引き寄せれば簡単に腕の中に収まった。

「口や態度は無駄にデカイくせに、華奢な躯してんなー。」
「べ、別に華奢じゃない!」
「はっ。俺に片腕で掴まった奴がよく言うよ。」
「ぐっ、…」

しばらく暴れていた半田も、力では敵わないと観念したのか大人しくなった。

「…今日の川藤、なんか変だ。」
「自覚してるよ。」
「…そんなに、俺が頼りないか?」
「違ぇーよ鈍感。お前を遠くへやりたくないの。」
「離れるのが嫌なのか?」
「ああ。本音を言うと、このままずっと俺の側に閉じ込めときてーよ。」
「何アブナイ発言してんだ変態!!」
「あははははー。」

(冗談めかして言ったけど、あれは紛れもなく本心だぞ、半田。)

叶うなら


(俺だけのものにして、ずっと手元に置いときたいんだ。)
(けれどお前のためだから)

『島はどうだ?  寂しくなったらいつでも帰ってこいよ』

(帰ってくる場所を用意して、お前の背中を押してやる)

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