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□(仮)愛が見えない
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「別れてくれませんか?」
「……え……?」
大事な話があると呼び出され、聞かされたのは信じたくない言葉で、目の前が真っ暗になった。
けれど、心のどこかでわかってたこと…
「あ、いえ……別れというより…しばらく距離を置いていただけませんか?」
「……どういう…こと…?」
言い直した彼。
それが、本心じゃないの?
「実はジュリアが妊娠しまして。もちろんアーダルベルトとの子供です。しかしアーダルベルトは現在連絡が取れないアマゾンの秘境の地。身内のいないジュリアひとりでは子供は…」
そう言って視線を外す彼。
一人じゃ大変だって事はわかる。…それがどうして結婚になるの?友人じゃあ支えられないの?
「これは俺が申し出たんですが最初はジュリアも渋ってて……昨日ようやく了承してくれたんです。」
嬉しそうに笑う彼。自分が申し出たって…そんなに彼女が忘れられないの?そんなに彼女の側にいたいの?
そんなに…私のことを何とも思ってないんだね
「…無茶なことを言っているのはわかってます。けれどお願いします。ジュリアには今俺しかいないんです。」
これは遠回しな別れの言葉?
「…わかった…」
「!ありがとうございます!そんなに時間はかからないと思いますから。アーダルベルトも一年以内には帰ってきますし…それまでですから。また連絡しますね?」
そう一人言い終えると席を立ち、額にキスを一つ落として出て行った。
「…バカみたい…」
彼にとって自分はセフレ以上恋人未満。自分は何度も好きだと言ったし、最初は彼もまだ彼女に気持ちが残っていた。それでもいいと関係を持っていたけれど…
「…三年も一緒にいたのに…一度も『好き』って言ってくれなかったな…」
一言言ってくれたら…待てたのに…
「…それでもきっと…彼女より小さい『好き』なんんだろうけど…」
ふと平らな下腹部に視線を落とす。
「…これでよかったんだよね…?もし言ったとしても…きっと彼女を選んでたろうし…」
ポタリ…ポタリと太ももにシミができていく。
「……っさよなら……」
もう、二度と会わない。もう、待つのは疲れてしまった。
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