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□(仮)二匹と二人
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「うおぉ〜い、コンラッド〜」

この部屋の主、ヨザックは帰宅するなり玄関から飼い猫であるコンラッドを呼んだ。

『……………』

普段ならヨザックの呼び声など無視するコンラッドだったが、声色に嬉しさと怯える様子が混在していたため、仕方なく腰を上げた。

コンラッドは血統書付きではないが、その艶やかなダークブラウンの毛と、薄茶色に銀の虹彩という不思議な瞳、ほどよく筋肉のついたすらりとした肢体から、人間から猫まで目を引く存在だった。
元々野良猫であちこちを放浪していたのだが、ある日どじを踏み車に轢かれるという目にあったのだ。それを偶然ヨザックに助けられ、苛めると楽しいので住み着いているのだ。

すらりすらりと歩きながらやってきた玄関先で、コンラッドは見知った人間を見つける。

「コンラッド〜あ〜〜前から言ってたと思うが、今日から一緒に住むから……よろしくな?」

「よろしく頼むよ。」

そうヨザックの隣で言ったのは、ヨザックの婚約者である村田健。以前から度々やってきていたのだが、このたび晴れて結婚することになり今日から共に暮らすことになったのだ。

それをすっかり忘れていたコンラッドだったが、まあいいかと思い用は済んだと言わんばかりに方向転換する。

「あっとコンラッド!言い忘れてたんだが、健ちゃんの飼い猫だったコもこれから一緒に住むんだけど………いいか?」

びくびくと怯えながらこちらを伺う様子にコンラッドは先ほどの声色の理由を知った。

コンラッドは嫌々ながらも顔だけ半分振り向く形で立ち止まった。

その様子にホッとしたヨザックは村田に振り向く。村田は心得たと言わんばかりに足下に置いていたケージを取り上げ廊下に置いた。

「ユーリって言うんだ。メスだよ。仲良くしてやって」

そう言って村田がケージを開けると、ゆっくりとその姿が露わになった。

『……ここが新しいおうち…?』

不安そうに現れたユーリにコンラッドは身動きがとれなかった。

純粋な黒い毛並みは艶々と輝き、まん丸で大きな瞳は不安で潤んでいた。

コンラッドは一目で欲しいと思った。




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