Short Story
□愛のかけら
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もうあと一週間ほどで新年というある晴れた日。
眞魔国血盟城からさほど遠くない湖の岸辺に見目麗しい一組の男女が逢瀬をしていた。
町中にいれば人目を引くこと間違いなしの二人だが、ここには二人以外いないのでそんな心配はない。
…女の方はいつも気づかないが。
「わあ…っ!きれいだねえ、コンラッド!きらきらしてる!」
「夏もいいですけど冬の湖も結構いいでしょう?」
「うん!なんか空気が張りつめてるっていうか澄んでる感じ。」
「ええ。」
「でも急にどうしたの?いきなり、湖に行きませんか?なんて。」
そう。年末だということでこちらの世界も例外ではなく、決算や新年の行事などの書類が目白押しで、ユーリはいつもより忙しかった。
それを承知で半ば強引に連れてこられたのだ。
理由を知りたいというのはもっともだ。
「…お嫌でしたか?」
コンラッドには珍しく、しゅんとしたような顔と声を出され、ユーリは焦った。
「いやっ、全然!?強引だったけど二人になれたの嬉しかったし!!…あ。」
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