『おにぎりとおむすび』


おにぎりとおむすびに違いはあるか…。
あるはずもない。
そもそもどちらも握り飯のことだ。
そのことについて延々二人は言い合いをしている。

「絶対おにぎりだって」
「いいや、おむすびだ」

そんなくだらないことでなぜ長時間言い合えるのか。
仲が良いからに他ならないと棒は嘆息した。
仲がよいのは構わないがうるさいことには変わりない。
この二人が何を言い合っているかと言うと実にくだらないことだが、棒が
「おにぎりとおむすびという言葉はどっちの方が多く使われているか」
といういつものささやかな疑問を口にしたからだ。
用はおにぎりだと言って聞かないし、心はおむすびだと言う。
自分から言い出したことではあるが棒はどちらでもよくなった。
なぜならもうほとんど痴話げんかだからだ。

「どうして心はいつもいつも僕につっかかってくるわけ!?」
「お前こそなんで俺の意見端から却下なんだよ」
「それは心がいつもおかしなことばかり言うからじゃん」
「俺がいつおかしなこと言ったよ!」
「いっつもじゃん」
「だからいつなんだって聞いてるだろ」

とまぁこんな調子だ。
どっちでもいいじゃないか。
おむすびと誰が何人言っていようと用になんら影響はない。

「けんかするほど仲が良し」
「棒なんか言った?」

棒の呟きを聞きとがめた用が突き刺さるような声を向けてきた。
八つ当たりもやめてほしい。
この前なんか二人がけんかしているところへ通行人の邪魔になるからと割って入ったら心と切り結ぶハメになった。
棒でなかったら死んでいる。
もうこりごりである。


おにぎりとおむすび、さてどっちのほうが使われているやら。
この時代では調べるに調べられないだろう。
今日も心と用はくだらないことを言い合いながら旅をする。
さっさとくだらない言い合いをやめてくれるよう棒は祈るしかなかった。



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