Bittersweet Stories

□Love is you...
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ピンポーーーーーーーーン。



深夜のヒトリ暮らしのユリの部屋の呼び鈴が音を立てた。

「ちょと、なんなの…?」

時刻は午前一時。
ユリはインターホンのスイッチを押した。

「ゆーーーちゃぁぁ〜〜〜〜ん」

聞こえてくるのはよく知る泣き声。

「…えぇ?マジで?…セナ?ちょ、ちょっとまって、今開ける。」


ユリは電子ロックのキーを解除して、部屋の鍵を開け、セナを待った。
ユリの部屋は五階にある。
やってきたセナはちょっと足元が覚束無い感じだった。
どうやら随分と酒の力を借りているらしい。

「ゆーちゃん、ごめんねぇ…終電無くなっちゃった。
泊めてくれない?」

「いや、いいけど…って何?
セナ、あんた泣いてるの?」

「うん…ちょーーっとね…
うわあ〜〜〜ん!!」

「や…!
ちょっとここで泣かないで!
話聞くから、部屋に入ろ?ね?」


ぼろぼろと鼻を真っ赤にして泣くセナを半ば抱きかかえるようにして、ユリは部屋のドアを閉じた。


その時はまだ、ユリの心の中には翌日提出のレポートの事が頭の中の大多数を占めていた。


セナは相変らず、部屋に入ったままの格好で泣き続けている。

「ね、コート脱いだら?
はい、これタオル…使いなよ。
アンタ化粧ヒドイ事になってるよ?」

「ヒドイって…そこまで言う?!
ゆーちゃんがヒドイよ!」

「だって…マスカラ落ちまくってるし、目の下真っ黒だよ…?」

「違うもん!
これはアイライナーが落ちたんだもん。」


…どっちでも一緒だよ…

ユリは小さく呟いて、今日の睡眠を軽く諦めた。


セナはきっと「終電を逃したから」ユリの家にやってきたのではなくて、何か話を聞いて欲しくてやってきたようにユリには思えたからだ。
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