Bittersweet Stories

□これからの話
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目が覚めて、思う。

あぁ、このまま脳が溶けてしまえばいいのに、と。

幸せな夢で目が覚めて、一気に絶望の谷へ落とされる、そんな感じ。

夢の中では彼女が笑ってて、俺もつられて笑ってて、手を繋いでどこまででも行けるね、そんな話をしていた。
キスして抱き合って飽きたら眠って、そんな夢を見ていた。

遅い朝の光の差す天井を見上げて、溜息をついた。



「オッパ、起きた?」

思い掛けない声でハっとしてガバリと起き上がり、現実を見据える。


そこにいるのは、彼女じゃない違う女。


「…あ、うん。今」
「そう。朝ご飯食べる?パンしかないけど」
「いや…いいや、食欲ないし」
「ん、わかった〜」



誰でもよかった。
彼女に似ていない女だったら、誰でも。

少しでも似ていたら、間違いなく俺は彼女の面影を探してしまうから。


おれ、酷いかな。

でもだめなんだ、何もかもが足りなくて、何もかもが不満なんだ。

何を見ても何をしてもひっそりと彼女の事を考え、どんなきっかけでも思い出すのは彼女の顔だった。


「うぇ。気持ち悪…」

「オッパ?おなか痛いの?」

「あーうん、ちょっと気持ち悪いかも」



彼女と別れてから、ずっとこんな感じ。
心も痛むけど胃もシクシクと泣き続けてる感じ。


彼女にまったく似た部分のない女が、心配そうに俺を覗き込む。

…俺を見るなよ、そう言い掛けて、やめた。



なんていうのかな、こういうの。

自分の心が自分から離れていくような実感のないざわめき。


…会いたいな、彼女に。

痛む胃の辺りに手を置いて、心配する女の横で彼女のことを考えた。


最低でもいい。

すがってでもやり直せるなら。
何度も考えた。


悲しみはとめどなく押し寄せて、彼女の笑顔の記憶を攫って行く。

思い出すのは、表情のない彼女。


笑ってるのかな、今頃。
仕事してんのかな。


やっぱり会いたいな。




なんでだめになっちゃったんだろう…
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