NanoSecond Stories
□ヨンソヘ
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…ヨンソヘ…
手っ取り早く過去の恋を忘れる為に必要なのは、新しい恋だと人は言う。
私は新しい恋に踏み出せないまま、ずっと彼に囚われたままの痛んだ心を抱えていた。
そう、私は彼を愛していた。
今も愛しているのかもしれない。
彼が私を嫌いになれない事にも、私は気づいていた。
そしてその事を心の何処かで嬉しく思う反面で、私は彼を憎んでいた。
「 …好きな人が出来たんだ」
「は?」
日本と韓国を行き来している忙しい彼から、突然言い渡された言葉。
それはあまりに予想外で、私の思考回路を一瞬停止させる。
「え?冗談じゃなくて?」
「うん。
他に大事な女が出来たから…だから、別れてほしい」
「…嘘でしょ?」
「ほんとに。
…こんな嘘、吐いてどうすんだよ」
「うっそ…ほんとに?
冗談じゃなくて?本気で?」
「うん」
ニコリともしない彼の表情から、本気の態度が充分伺えた。
冗談抜きで私にとってこれぞまさに青天の霹靂ってやつで…。