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□A.M.07:05
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M/act-1
A.M.07:05
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彼はその頃からもう既に狼だった。
そして、眩しい存在だった。
「ね、ライブ行かない?
イミヌのライブ、友達が急な仕事で行けなくなっちゃって、チケット余っちゃったんだよね」
「え…」
「チケ代はいらないからさ、一緒に行ってくれない?
オールスタンディングだから一人だと寂しいしさあ、いいでしょ?
行こうよ〜」
「え〜〜…気が乗らないなあ…」
「なんでえ?
高校の同級生なんでしょ?」
「だって…別に今はもう付き合いもないし…」
「なんだぁ。
まぁいいや、とりあえず同級生の晴れ姿でも見ておけばいいじゃん
?」
気が乗らないまま、どうしてもと言うので仕方なく付き合うことになった、イミヌのライブ。
…会う…というか生の彼を見るのは何年ぶりだろう。
テレビではよく顔を見るけど、その場で動く彼を見るのは高校卒業以来だと思う。
彼はきっと知らない。
私が神話のCDや彼のソロのCDを聞いていることを。
いや、彼は私が彼の歌を聴いているのを知っているのかも知れない。
「聞いてないわけがないだろ?」
そう言ってニヤリと笑う彼の顔を、簡単に想像出来た。
その顔は昔の、子供の顔をした彼の顔ではなく、今の彼の顔だ。