僕のヒーローアカデミア

□18話
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『(酷い顔・・・)』

次の日の早朝。

あまり眠れなかった恋歌は共用の洗面台で、自分の顔を見て気合いを入れる為に思いきり頬を叩いた。

『(暗い顔するな

また心配をかけるだけ

大丈夫、私は大丈夫)』

自分自身に大丈夫だと何度も言い聞かせて、昨日行く予定だったパワーローダーの元へ行くために誰にも会う事なく寮を出る。

今日帰ったら話したいことがあると焦凍にメールで伝え、了解と返ってきている。

解決策も何もない。

ただ、学校側から言われたお見合いをするということを報告するだけ。

それでも伝えるのが怖い。

何と言われるかわからないから。

だから自分を励ます言葉も大丈夫としか言えない。

気を抜くとお見合いの事を考えてしまうので、できるだけ考えない様にしながらパワーローダーの元へ行き要件を伝えた。

パ「・・・・大丈夫か?」

『・・・・そんなわかりやすい顔してます?』

普通に話していたはずなのにパワーローダーは心配そうに恋歌の顔を見ている。


パ「まぁ・・・いつもより元気ないなって程度だけど、恋歌は細かい事は気にするタイプじゃないからな

顔にまで出てるってことは相当の理由だろ」

恋歌から頼まれたものを受け取り、出来上がれば連絡すると伝える。

『・・・パワーローダー先生は好きな人はいますか?』

パ「・・・いや、いないけど」

唐突な恋歌の問いかけに一瞬答えるべきか迷ったが、真剣に聞いてきていたので一応返事をする。

『・・・じゃあ、好きな人がいたとして、どうしても別の人とお見合いをしなければならない場合になったらどうしますか?』

パ「・・・その見合いは絶対?」

『はい』

椅子に深く腰掛けながら考えるようなので、パワーローダーが口を開くのを待つ。

パ「そうだな・・・

逃げられないんだったら行くのは行く

けど好きな人がいるっていう前提なんだったら、その見合い相手に嫌われるようにするかな」

『嫌われる・・・』

パ「だってどうでもいい相手と見合いしないといけないってことだろ?

じゃあ適当でいいんじゃない?」

パワーローダーの意見は一般的な意見で言えばひとつの正解なのかもしれない。

けれど今回は学校の為にしなければならない。

もし恋歌の態度が悪く雄英の評判が下がってしまっては、校長にも相澤にも申し訳ない。

しかも現状はUSJ事件をはじめ、林間合宿での拉致事件、全寮制の導入など雄英の評判は下がってきている。

『そう、ですか』

パ「・・・参考にならないか」

『いえ、急にすいません

今のはたとえ話なんで忘れてください

”それ”お願いします』

お礼とお辞儀をして部屋から出ていく恋歌を見送って、パワーローダーは深いため息をつく。

パ「たとえ話ねぇ・・・

相変わらず嘘はへたくそだな・・・」










相「・・・おはよう」

『おはよ』

職員室に入るなり恋歌の顔を見て微妙そうな顔をした相澤はあいさつだけをして自分の席に着く。

相「・・・今日は教室に来なくていい」

『・・・うん、そうする』

HRの準備をしてさっさと職員室を出ていく相澤の背中を見送る。

『(バレてるわけね・・・)』

相変わらず隠し事が出来ない自分に苦笑いをしながら今日は何をするべきかを考える。


相澤は恋歌が今気を抜いてしまえば泣きそうになっていることを見抜いていた。


だから一番気を抜いてしまうだろうA組に来なくていいと言ったのだ。

『(涙腺も弱くなったもんだ)』

昔はどんなに怪我をしようとも、エンデヴァーにぼこぼこにされようとも、実技訓練がうまくいかなくても泣いたことはない。

それなのに今年度に入ってから数えきれないぐらい泣いた。

それは涙腺が弱くなったのか、泣ける環境ができたのか。

なんにせよ今はA組の面々に会ったら泣いてしまう可能性があるので会えない。

『(泣くな、大丈夫)』

繰り返し繰り返し自分に”泣くな”と”大丈夫”を言い聞かせる。

ミ「恋歌ー!

あんた宛に電話よ!!」

仕事に取り掛かろうと意気込んだ矢先にミッドナイトが大きな声で遠くから電話が来ていることを知らせてくる。

『わかりました

ありがとうございます』

受話器を持ち上げ保留ボタンの光っているところを押し、自分の名前を名乗って電話に出る。

『え・・・』

その電話はやっと持ちこたえている状態の恋歌の精神を更に崩壊させるには十分な内容だった。
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