桜姫

□エースと買い物
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風呂にも入り、後は布団に入って寝るだけなので寝室のベッドの上に座ってゆっくりしていると恋歌がエースに話しかけた。

『ねぇ、エース

聞きたいことがあるんだけど今いいかな?』

エ「?

何だ聞きたいことって?」

『えっと…

その…』

恋歌は少し言いずらそうに口ごもる。

暫く俯いていたが顔をあげてまっすぐエースの黒い瞳を見つめる。

『何でエースは私のことをちゃんと呼んでくれないのかなって思って』

まさかそんなことを言われると思っていなかったのか少し面を食らったような顔をしていた。

だが、問われていることを理解すると恋歌から目を逸らして今度はエースが俯いた。

エ「それは…」

『急に知らない人の所に預けられて警戒してしまうのは仕方ないと思うわ

でも私としては名前で呼んでほしいなって…

あ、お母さんとかでもありだけど』

最後の言葉は冗談混じりに言ってみた。

エースが本当の母親"ポートガス・D・ルージュ"に恩を感じていることは知っているから。

偽物の母親である自分にその言葉は重いと思った。

でも名前を呼んでくれないのは寂しい。

エ「呼んでも…いいのか?」

『え?』

主語のない話し方に何を呼んでもいいのかと聞かれているのかわからなかった。

エ「俺があんたを"母ちゃん"って言ってもいいのか?

俺なんかが…っ!?」

そこまで言って恋歌に抱き締められエースは言葉を切らざるを得なかった。

『エース、私はあなたの母親としての役割を任せられている

でもそれは決してガープさんに言われたからだとか嫌々だとかそんなんじゃないの

私がエースを愛しているから、たとえ全てを捨ててでも変えたいと思えるあなたがいるからここにいるの

自分のことを"なんか"なんて言わないで

エースはお父さんのことをよく思っていないかもしれない

でもね、エースのお父さんがいなければあなたはこの世に産まれてくることはなかった

産まれてこなければあなたと私が出会うこともなかった

だから私はあなたのお父さんとお母さんに感謝してるの

産んでくれてありがとう、出会わせてくれてありがとうって

そんなことを思う私をエースは馬鹿げてると思う?』

そう聞かれてエースは恋歌の腕の中で大きく首をふった。

エ「お、俺も…っ、会えてよかっだっ…」

声からしてエースは泣いているようだ。

エ「俺はっ、産まれてきちゃいけない存在なんだと思ってた…

今海賊たちがいっぱいいるのは"海賊王"のせいなんだって

俺は産まれてきてもよかったのかな?」

その言葉に恋歌は満面の笑みで答えた。

『もちろんよ』

エ「…っ、ありがとう…


"母ちゃん"…」

その言葉を最後にエースは眠ってしまった。
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