僕のヒーローアカデミア

□1話
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今から約5年前の春、恋歌は雄英高校の1年生だった。

雄英高校ヒーロー科に通ってはいるがヒーローになるつもりはない。

特にこれといった夢もないので兄に勧められヒーロー科に通っているだけだ。



今日は学校帰りにヒーロー活動で負傷した兄の同僚の見舞いの為に病院に来ている。

兄が自分で行けばいいのだがあいにくと忙しいようなので、代理として恋歌が来たのだ。

手には途中で買った花束と果物を持っている。

『(あとでちゃんと請求するからね・・・)』

花束と果物の領収書をしっかりと財布におしこんで、病院に足を向ける。



『(確か貰った地図ではこの辺にある大きな病院なんだけど・・・


ああ、これか)』

兄に貰った地図を頼りに病院への入り口を見つけた。

さっさと済ませて帰ろうと病院の敷地に足を踏み入れる。


一歩敷地内に入ると視界の端っこに小さな塊をとらえた。

不思議に思い塊の方に目を向けるとそこには赤と白の髪をした男の子が、ランドセルを背負ったままうずくまっていた。


学校帰りな上に初対面の人の見舞いなので面会時間ぎりぎりに行こうとしている為、すでに夕方だ。

見たところひとりのようだし、いくら日が長くなってきたとはいえ、小学生はそろそろ家に帰らなければいけない時間ではないのか。

一瞬声をかけようか迷ったが、志してはいないとはいえ一応ヒーロー科にいる身としては声をかけるべきだろうと判断した。


『ねぇ・・・お腹でも痛いの?大丈夫?』

男の子の前にしゃがみなるべく優しい声で話しかける。

「え・・・?」

はじかれたように勢いよく顔をあげた男の子は、オッドアイの瞳を涙でゆらゆらとゆらしていた。

『もう遅い時間だよ。

帰らないとおうちの人に怒られるんじゃない?

それとも病院の中におうちの人がいるのかな?』

内心泣いてる子どもは苦手だと思いながらも、一度話しかけてしまった手前あとには引けない。

「お、母さんが・・・ここにいるんだけど、会えないんだ・・・」

今にも零れ落ちそうなほど溜まっている涙を流さない様に必死にこらえながらまたしても下を向いてしまう。

『(会えない・・・ってことは重い病気とかなのかな・・・)


今ひとり?他にお父さんとか身内の人はいる?』

重い病気とかであれば子どもだからと外で待たされているのかも知れないと思い、聞いてみたがこの問いには首を横に振るだけだった。

『(てことはひとりか・・・

小学生がひとりで来れる距離なんか知れてるだろうしね・・・よし)

ねぇ、お姉ちゃんすぐに戻ってくるからここで少し待っててくれる?』

「え?・・・なんで?」

もう一度驚きで顔を上げた男の子はぽかんとした顔をしている。

ふわりと優しく頭を一撫ですると、さらに驚きで目を見開く。

『一緒に帰ろう』

撫でられた頭を口を開けたまま自分の手で触る男の子を待たせない様に全力疾走で病院に向かった。
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