僕のヒーローアカデミア

□18話
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早朝のランニングをしに行くという焦凍に合わせて恋歌も焦凍の部屋を出て、恋歌は出勤の準備をするために自室に帰った。

『(そういえば始業式の後に校長先生から話があるって言われてるんだったな・・・)』


爆豪と出かけたときに相澤からきていたメールの内容を思い出し、またなんの話があるのだろうとため息をつく。

嫌な予感しかしないが、考えても内容はわからないので考える事を止めていつも通りのスーツを着て部屋を出る。

いつもより早い時間だが、始業式なので準備をしなければならないことがある為少し早めに出なければならない。

パワーローダーに相談したいことがあるため、大きめの袋に”それ”を入れた物も持って1階へ。

1階の共有スペースに行けば、喧嘩をして謹慎をくらった爆豪と緑谷が談話室を掃除していた。

緑「恋歌先生、おはようございます

早いんですね」

今の時間は生徒たちは一人も登校していない時間。

『今日始業式だからね

ちょっと準備があるんだ』

緑「そうなんですね」

爆「おい」

緑谷と会話をしていると少し遠くから、爆豪が視線を向けて声をかける。

爆「・・・よかったな」

小さく、小さく呟かれたその言葉に恋歌は嬉しそうに笑う。

『爆豪君のおかげだよ

ありがとう』

爆「・・・おう」

背中を押してくれた爆豪に心からのお礼を。

言葉だけではこの感謝の気持ちは伝わらないかもしれないけれど。

緑「(謹慎になったのにかっちゃんの機嫌がいい・・・

昨日二人で出かけてたみたいだしなにかあったのかな?)」

珍しく眉間に皺があまり寄っていない幼馴染と、嬉しそうに笑っている恋歌を交互に見てここで自分が口を出せば幼馴染がキレることはわかっているので口は出さない。

『じゃあ、いってきます』

緑「いってらっしゃい」

爆豪の頭をくしゃくしゃと撫でて恋歌は笑顔で玄関から出て行った。

爆「・・・・さっさと掃除すんぞ」

緑「・・・・そうだね」

いつもより機嫌のいい幼馴染にいつもこうだったらいいのに、と思ったのは悟られないように掃除を再開した。










そして始業式。

校長の話から始まり、生活指導のハウンドドッグ(ブラドキング通訳)の話、注意事項。


≪それでは3年生から教室へ戻ってください≫

始業式終了後、生徒はすみやかに校舎に入っていく。

最後の生徒が校舎に入ったのを確認し、後片付けをしていると校長が歩いてくるのが見える。

校「やぁ!相澤先生から私から話があるのは聞いてるかな?」

『はい』

校「もう誰もいないから話をしながら校長室に行こうか」

校長の言葉に頷いて、ひょいと校長を抱き上げる。

校長室に向かって足を進めると、”実はね”と話し始める。

校「恋歌先生、君に・・・お見合いの話がきている」

『・・・・・・は?』

聞き間違いかと思い驚いて抱えている校長を見下ろすが、嘘は言っていない表情をしている。

『えーと・・・

なんでまた・・・?』

校「これもまたあの神野の時の余韻のようなものさ

すべてのサイドキックの話を断り、どこからかオールマイトとの熱愛は誤報だと周った


しかし君の戦闘技術を雄英の事務員として置いておくのはもったいない

じゃあ結婚させてしまえばいいんじゃないか、というわけさ」

言われている事がまるで理解できない恋歌は、難しい顔をして眉間に皺を寄せる。


その様子を校長が苦笑いをしながら見る。

校「恋歌先生と近い年齢のご子息のいる事務所は君と結婚をしてしまえば、恋歌先生のその戦闘技術も手に入るし、サイドキックとしてではなくとも事務所に迎え入れる事が出来るんじゃないか、ということみたいだね」

『・・・・あー、あんまり言いたくありませんが、考えが安直すぎやしませんか?』

校「それだけ恋歌先生の事が欲しいと思っているプロヒーローはたくさんいるってことさ」

校長室についたため、いつも校長が座っている椅子に降ろして、恋歌は机越しに正面に立つ。

校「以前からちょくちょくそういった話はきていたんだが、私と相澤先生がすべて断っていたんだよ

君にはすでに大事な人がいるからと」

『・・・はい』

校「けどね、私だってこんなことは言いたくはないけど恋歌先生の大事な人との関わりは現状では公にできるものではないのはわかるね?」

『わかって・・・います』

校長はすでにすべてを知っているのだろう。

恋歌の大事な人が焦凍であるということを。

エンデヴァーとの対決で雄英を使っていたのだから当然と言えば当然ではある。

そして、校長の言っていることは正論であり恋歌自身も焦凍と付き合う時に悩んだ内容でもある。

現在は教員と生徒。

しかもエンデヴァーの息子。

メディアが好きそうなネタだ。

正式に付き合ったのは昨日なのでそこまでの詳細は校長も知らないだろうが、恋歌がお見合いをしたところで結婚をするとは思っていないだろう。

それでも勧めてくるのは断る理由がほしいから。

それはわかる、わかるが・・・。

『私は・・・どうすればいいんでしょうか』

校「納得のいく断りがいるね

今までは恋歌先生はまだ若くそういったことはまだ考えていない、という理由で断っていたんだ

けれどそれだと一度だけでも会ってみないか、と言われていてね


雄英はヒーロー科があるから中にはお世話になっていて断りにくいプロヒーローもいる


だから、断るために恋歌先生には形式上だけでもお見合いをしてもらう必要がある」

『それは・・・断れない、んですよね』

今にも泣きそうな顔をしている恋歌に校長は申し訳なさそうに目を伏せる。

校「すまないね

酷い事を言っているのも自覚している」

好きな人がいるとわかっている人に他の人とのお見合いを強要している。

しかも学校の為に。

恋歌が断ることができないとわかっていながら。

苦渋の決断ではあった。

恋歌は自分の意志で学校に残る事を選んでくれた大事な教員。

だからこそぎりぎりまでは校長や相澤があしらっていたのに、それすらも追いつけないほどの数のお見合い話、そして地位のある者から話がきてしまった。

もう隠し通すことはできない。

『考える時間は頂けるんでしょうか・・・』

校「もちろんさ

けれど結局先延ばしになるだけで、してもらわなけらばならないというのはわかっているね?」

『・・・はい』

校「数日中に取り敢えず一人を選んでほしい

そこに置いてある資料が私と相澤先生が選んだ人たちだ」

”そこ”と言われて校長の視線の先を見れば10枚ほどの書類の束が置かれていた。

それを手に取って無言で頭を下げて校長室を出る。

校「(どうして恋歌先生ばかり辛い思いをするんだろうね・・・)」

先ほどの恋歌の泣きそうな顔が頭から離れない。

恋歌がどれだけ努力をして今の力を持っているのかを知っている。

だからこそ、想い人以外の人とお見合いなどさせたくはない。

校「やはり校長といえどいざとなればなんの力もないね・・・」

辛そうな校長の声は誰にも聞かれることなく、空気に溶けていった。
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