学校へ行こう

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『どうぞ』


ノックの音に顔を上げると、そこには赤髪の青年が立っていた。


『どうし――――』

「・・・・・」

『入れ』


その腕には、猫を抱えて。
恐る恐るといった様子で青年は一歩踏み出し、猫を見下ろす。


『ここに来たという事は、どこか怪我しているのか?』

「・・・・・」


青年は無言で猫を床に降ろす。
状態を診ようと、私も同じく屈み手を差し出した。


『後ろ足か』

「・・・(コクリ)」


青年が頷く。
猫は後ろ足を庇おうと、小さく跳ねて歩いていた。


『ふむ・・・外傷は見られないが、私は猫は専門外なのでな。何とも言えない』

「・・・・・」


そう告げれば俯く青年に、だが、と付け足した。


『知り合いに連絡してみよう。獣医がいる』

「!」

『落ち着け、連絡してくる』


言葉こそ無いものの、彼は嬉しそうに何度も首を縦に振っていた。


『―――久しいな。仕事だ、すぐに来い』

「・・・?」


携帯電話を切り、次に内線で校長に許可をもらう。


『少し待たせてしまうが、問題ないか?』

「(コクリ)」

『私だけでは不安がるだろうしな』


そいつが、と指した猫は青年の膝の上で首を傾げていた。

さて、二人で獣医を待つとしよう。
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