学校へ行こう
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「貴様、雨宮薫という名か」
『む、そうだが』
今日も今日とて、怪我や不調ではないと思われる生徒がやってきた。
不健康そうに見える彼だが、来た理由は違うようだ。
「刑部が、よく貴様の話をする」
『刑部・・・あぁ、大谷さんか』
私が在学中の主事さんが、周りから刑部と呼ばれていたのを思い出した。
そういえば、黒田先生もそう呼んでいたな。
「・・・・・礼を言っていた」
『?、大谷さんが、か?何の礼だ?』
「、立ち上がれなくなったところを助けただろう」
私の卒業と同時に退職した大谷さん。その理由は、悪くしていた脚に限界がきたからだと聞いた。
『ん・・・そうだったか』
「聞き間違いではない。おぶられたのは、私以外では貴様だけだと言っていた」
あぁ、もうひとつ思い出した。
『・・・元気にしているか?』
大谷さんから聞く話の中には、三成という名前が頻繁に出されていた。
あの頃見せてもらった写真の男の子は、目の前の青年だ。
「あぁ・・・脚も、治ってはいないが悪化もしていない」
『そうか』
「・・・・・」
『・・・・・』
「・・・・・」
私を鋭く見つめたまま動かない彼。
その鋭い目を見つめ返す私。
『どうした?』
私の言葉に、彼は勢いよく目をそらした。
顔ごと、だ。首痛めるぞ。