学校へ行こう
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「わ、私からも、礼を言いたかったのだ」
『・・・そうか』
「・・・刑部は、そういう風に接された事がない」
『あぁ』
「あれほど嬉しそうに話すのだ・・・私も嬉しく思った」
吃りながら、俯きながら、彼は続ける。
大谷さんが彼を大切に思うように、彼もまた大谷さんが大切なのだな。
「刑部に頼まれたのだ」
『、?』
「薫を悪い虫ケラ共や不幸から守れ、と」
『・・・・・』
・・・虫ケラはともかく、不幸が誰を指しているのかはなんとなく察した。
「今の生徒は、昔、悪名高かった奴らばかりだ。悪運強いのもいるだろう」
『・・・おい「そいつらから貴様を守るよう、刑部に言われている。黙って私に守られろ」・・・待て待て』
そういうことか。大谷さんも心配性だ。
いや、しかし―――
『気持ちは嬉しいが、心配ない』
「、だが『三成、』・・・っ」
『悪い奴なんていない』
―――そう、悪い奴なんていない。
『全てを、とは言えないが・・・私はわかっているつもりだ』
自分の意思ではない不幸はどうしようもないが。
『・・・その人と真っ直ぐ向かい合うこと。“人間”を知ること。とても大切なことだよ』
「・・・・・刑部の言っていた通りだな」
『大谷さんも“私”を見てくれていたよ。感謝してもしきれないくらいだ』
学生時代、私は周りを困らせてばかりいた。
欲しかったのは、“仲間”ではなく“味方”だったのだ。