学校へ行こう

□10
2ページ/3ページ



「わ、私からも、礼を言いたかったのだ」

『・・・そうか』

「・・・刑部は、そういう風に接された事がない」

『あぁ』

「あれほど嬉しそうに話すのだ・・・私も嬉しく思った」


吃りながら、俯きながら、彼は続ける。
大谷さんが彼を大切に思うように、彼もまた大谷さんが大切なのだな。


「刑部に頼まれたのだ」

『、?』

「薫を悪い虫ケラ共や不幸から守れ、と」

『・・・・・』


・・・虫ケラはともかく、不幸が誰を指しているのかはなんとなく察した。


「今の生徒は、昔、悪名高かった奴らばかりだ。悪運強いのもいるだろう」

『・・・おい「そいつらから貴様を守るよう、刑部に言われている。黙って私に守られろ」・・・待て待て』


そういうことか。大谷さんも心配性だ。
いや、しかし―――


『気持ちは嬉しいが、心配ない』

「、だが『三成、』・・・っ」

『悪い奴なんていない』


―――そう、悪い奴なんていない。


『全てを、とは言えないが・・・私はわかっているつもりだ』


自分の意思ではない不幸はどうしようもないが。


『・・・その人と真っ直ぐ向かい合うこと。“人間”を知ること。とても大切なことだよ』

「・・・・・刑部の言っていた通りだな」

『大谷さんも“私”を見てくれていたよ。感謝してもしきれないくらいだ』


学生時代、私は周りを困らせてばかりいた。
欲しかったのは、“仲間”ではなく“味方”だったのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ