復活

□過ぎていく日常
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PM6:00


 延刻の終った野球部が、校庭に向かって挨拶をした。
 そして、山本が制服に着替えようと、更衣室に入ろうと思った瞬間。

「良く出来たね。君にしては上出来だよ」

 高い声が聞こえた。

 山本は、後ろを振り向く。その顔に一切の情なんて組み込まれていなかった。ただ、その人間を見つめるだけの表情だった。


***

 ボフン。

 山本と寝たベッドに寝転がり、山本が好きだといっていた野球チームの試合を観戦する。
 昔は、野球なんて見なかった。見るとしたら、ニュースやら、教育用DVDやら。そんなことにかまけているようなことは昔は本当に一切無かった。それだけで、自分と、山本の関係の深さがわかる。

 今まで見なかった野球。

 それだけで。どれだけ山本に感染されていたか分かる。今では、野球のウンチクが2、3個飛び出すほどだ。
 ショックだった。
 自分は誰にも感染されないと、誰かに一色にはされないと。ずっと思ってきたことなのに、今は、山本に全てを乗っ取られている。頭も、心も、体も。全部が全部。今は山本のものだ。他の人間に告白されたら即断ると思う。自分には、好きな奴がいるのだと。既に一方通行だと分からされているにもかかわらずにだ。
 ため息すら出なかった。

 変わりに一粒の涙が出た。
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