復活

□バレンタインデー
2ページ/3ページ


 山本のマヌケ面が5倍ほど上がっている気がした。

 世はバレンタインデー。チョコレート会社の策略に、女共がまんまと陥る日。この日のためだけに、何人の女がバカな買い物をしたことか。

 だから、オレはチョコレートなど買わないと。否、買うべきではないと思ったのだ。

 しかし、机の中には、一ヶ月ほど前から買っておいた板チョコが入っていた、別に山本のために買ってきた訳ではない。断じてだ。


「どうした?ごーくーでーらー」


 山本が、自然を装い、行き成り、俺の机の中を覗き込む。


「おーっ!チョコレート!もしかしなくてもオレに?」
「う・・・うるせー!ンなわけねェだろ!」


 思い切りチョコレートを引っ手繰る。

 本当は山本に向けたものだったのだが、そんな恥ずかしいこと、口が裂けたっていえない。


「まぁ、いいや。これ、やるよ獄寺」


 山本が、制服の胸ポケットから何にかを取り出した。

 四角の少し厚みのある小さなチョコ。まさしくそれは、チロルチョコだった。


「もらえるとは思ってなかったから買っておいたんだよなー」


 ズキッと、心が痛んだ。

 信用されていなかった事に対してと、少しも俺のことを信じてくれなかった事に対して。


「・・・ッ!やるよ」
「・・・?」
「これやるっていってんだ・・!」


 恥ずかしさで、脳がパンク状態になりながらも手にもっていた板チョコを、山本の胸の前に押し出す。


「そうかー?有り難うな」


 獄寺はそれが山本の計算だと知らずに。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ