短編

□一匹狼の引き入れ方
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「一方通行、好きだよ」

私としては勇気を出した一世一代の告白だったのだけれど……

「オマエ頭イカれてンじゃねェの」

あまりにあっけなく玉砕した。
しかしこれでは納得がいかない。

「……イカれてないよ。正気だよ」
「俺みたいな化物なンざ好きになっていい筈がねェンだよ」
「なんで。あなたは化物じゃないよ」
「化物と一緒になったって不幸になるだけだ。オマエはどっかの野郎と幸せになってろ」

そう吐き捨てて彼は背を向けた。
ああだめ、行かないで。
私は自ら一人になろうとする彼の手を掴む。
この人はもう孤独でいなくてもいい筈だ。

「私はあなたと幸せになりたいって言ってるの!あなたの気持ちを教えてよ」
「離せよ……」
「聞くまで離さない」

彼は能力を使わない。
私を拒絶しきれないのだ。

「……きだよ。オマエの傍にいてェよ」

絞り出すような掠れた声。
表情は窺えない。
けれど彼の声が、心からの声が、やっと聞けた。

「私もだよ。一緒にいようよ」
「オマエは光の世界の住人だろ……」
「あなたもだよ。闇から抜け出てきた」

望みは同じなのに叶えられないなんて損だよ。
私は言葉を続けた。

「幸せって難しいこと?私はあなたといられるなら幸せだよ」
「……っ」

一方通行がこちらを向いた。
彼の華奢な腕が背中にまわり、きつくきつく抱き締められた。

「……俺も、だ。なァ、おなまえ。ずっと、傍にいるって言うのかよ。嫌わないで、俺の隣にいてくれるって」
「そうだよ」
「もォ、オマエのこと離してやれねェぞ。」
「本望だよ」

私は一方通行の胸に頬をつけて言った。

「ね、傍にいてェよの前、聞こえなかったんだけど」
「調子乗ンじゃねェよ」
「あたっ」

ピンッとおでこを弾かれた。
まぁいいか。
これから先は長いのだから。
きっと機会はいくらでもある。

「好きだよ、一方通行」
「……おォ」




end

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