短編

□珈琲責め→カフェオレ責め
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※コーヒー責めの逆ver.ですのでちょっと注意。




今日も強い日差しが照りつける。
太陽からの地球内暴力は深刻だ。
みょうじはくだらないことを考えながら一方通行の元へ向かっていた。
彼の家にアイスはない。
途中コンビニに寄り、アイスを選ぶ。
ふと飲料コーナーに目を移したみょうじは、昨日の仕返しを思い付いた。
アイスとジュースを数点選びコンビニを出た。

「おじゃましまーす」

一方通行の部屋にはまだ冷房がついていなかった。
部屋は大分蒸し暑くなっている。
肝心の一方通行はソファにはおらず、まだベッドの中だった。
この暑さでは起きるのも時間の問題だろう。
冷房の効いた部屋を期待していたみょうじとしては残念な状況だが、一方通行が寝ているのは都合が良い。
みょうじはほくそ笑んだ。

「……一方通行、おはよ」

ベッドに腰掛け眠る一方通行に微笑みかけ、みょうじは買ってきた飲料を口に含んだ。
彼は蒸し暑さでか眉をしかめ、身をよじっている。

「……ン」

一方通行のうっすらと目を開いた先、迫るのはみょうじの顔。

「ふ……むむ!」

目覚めて早々唇を塞がれた一方通行は目を白黒させた。
舌を唇に差し込まれ、入ってきたのは甘ったるいカフェオレ。
その甘さに一方通行は眉間のシワを寄せた。
彼は唇が離れるなり怒鳴り付けた。

「いきなりナニしやがるこのタコ!」
「いやぁちょっと、昨日の仕返しをば……」
「アレは仲直りしただろォがよ!」

暑いわ口の中は甘ったるいわで最悪の目覚めだ。
一方通行は甘ェ、と呻いている。
盛大な溜め息を吐きながらぼそりと言った。

「口直し」
「え?」
「口直し持ってこい」

みょうじも恋人の機嫌を損ねたいわけではない。
ベッドから立ち上がると、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターと缶コーヒーを持ってきてやる。
好きな方を飲めばいいという配慮だ。
一方通行は迷わず缶コーヒーを手に取るとプルタブを空け、呷るように飲んだ。
ごくり、と彼の喉仏が上下する。
そのブラックコーヒーを飲み干した上で彼は言った。

「ほら、してみろよ」
「え?」
「仲直りのキスだろ?おなまえ」

一方通行は愉しげに目を細めている。
みょうじはうう、と渋りながらも今日の自分は分が悪いと思った。
そもそも蒸し返したのはみょうじである。
自業自得だ。

みょうじはそっと一方通行に口付けた。
彼女は唇を押し当てただけで済ませようと思ったが、彼はそれを許さない。
唇を割って入ってきた舌が、彼女の逃げようとするそれと絡み合う。

「んっ……ふ、……」

味覚と嗅覚で一方通行の飲んだコーヒーを感じる。
無糖で苦い筈なのに、彼の唾液は甘い。
おそらく彼が好きだからだろう。
みょうじはそれらを全て飲み干した。
この行為の甘さに、そしてこの熱に、みょうじは溶かされたような気分になる。
唇が離れると互いのそれから銀の糸が橋を作った。
一方通行の額からは汗が滲んでいる。

「はっ…………」
「ぷは……暑ィ」

一方通行はみょうじと共にベッドに倒れ込むとリモコンを探り、冷房の電源を入れた。
設定温度も一時的に下げておく。
すぐに冷気が伝わってくる。
暑さと先程のキスのせいで二人の息は上がっていた。
呼吸が落ち着き始めた頃、みょうじはおもむろに身体を起こすと台所の方へ行ってしまった。

「オイ?」

取り残された一方通行は疑問符を浮かべる。
ミネラルウォーターは此処にある。
まだ此処で涼んでいても良いだろうに、一体何をしに行くのか。
やがてみょうじは顔を綻ばせながら戻ってきた。
頬には何か入っているようだ。
そのまま一方通行の隣に横になると、唇を合わせてくる。
一方通行はまた何か企んでやがる、と思いながらも拒みはしない。
みょうじの唇から与えられたものは、氷だった。
氷が舌の上を滑り、生ぬるい口内を冷やしていく。

「ふふ、プレゼント」
「プレゼントも何も俺ン家のだろォが」

一方通行はガリガリと氷を噛み砕きながら言う。

「まァ、夏には悪かねェ」
「ほんと?」
「ただし、寝起きには禁止な」




end
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