短編
□拍手
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夢オチシリーズ
A嫉妬 -A side-
私は一方通行と町を歩いていた。
買い出しの帰りなのだろうか、隣を歩く彼はビニール袋を持っていた。
軽々と持ってはいるが袋には様々な食材が入っており重そうだ。
彼の能力のことを忘れ、ちょっと悪いなぁという気持ちになる。
しかし仮にも男の子である彼を立てて黙っておくことにした。
「明日は何がいい?」
「あァ?」
「明日の夕御飯」
「……肉がいい」
「もう、またそれ?」
何度もしたやり取りに軽く膨れっ面を作ってみせる。
「じゃ、鶏肉」
「うーん、もうちょっと絞ってよ。あ、私親子丼食べたい」
「じゃあそれでいいだろォが」
「いいの?いつも私ばっかりメニュー決めてるからなんかなぁ」
「何でもイインだよ。オマエの飯ハズレ少ねェし」
「……それは私の料理はなんでも美味しいよっていう口説き文句だったり…?」
「おめでたい頭してンなオマエは」
ちぇ、と呟いていると雑踏の中に見覚えのある顔を見つける。
「……あ、今の人一一一(ひとついはじめ)君に似てなかった?」
袖を掴んですれ違って行った通行人を振り返る。
一方通行はいつもにも増して不機嫌な顔をしていた。
「はァ?いちいち見てねェし」
「……ねぇ、一方通行」
「……」
「歩くの早くない?」
「……」
無反応。
――怒らせてしまった?
ここまで怒った彼を見るのは初めてだ。
何故、ここまで機嫌を悪くさせてしまったのだろう。
気まずい。
帰る場所が一緒である分、早く機嫌を治して欲しい。
理由はわからないが謝った方がいいのだろうか。
―――私、悪いことしたかなぁ。
悩んでいるうちにアパートの部屋の前まで着いてしまった。
ダン、
ドアに追い詰められ顔の横に手をつかれる。
ドアに打ってしまった後頭部が地味に痛い。
しかし迫る一方通行の顔に、目をそらすことはできなかった。
ギラギラとこちらを見つめる彼は肉食獣のようだ。
いつもの彼と違って、余裕がない表情をしている。
「あ、あくせられー…?」
「オマエはすれ違う通行人の顔をいちいち見てやがンのか?」
「え、あ、そんなに不躾だったかな?」
「あァ?!」
怖い。こんな彼は初めてだ。
怒鳴る声に思わず涙目になる。
それに気づいた彼は困惑した顔をした。
「なンでオマエが泣くンだよ」
眉尻を下げて私の肩に顔を埋める。
「オマエは俺のモンだろォが……俺だけを見てろよ」
Pi-Pi-Pi...
「はっ!」
夢をみていたらしい。
うっかり同居人と少女漫画を始めてしまった。
顔を覆いたくなる羞恥に耐え、目覚まし時計を止めて起き上がる。
眠る一方通行を起こさない様、細心の注意を払いながら洗面所へ向かった。
鏡に映った自分の顔は赤くなっていた。
しばらくは同居人の顔をまともに見られそうもない。