短編

□拍手
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夢オチシリーズ
F猫耳-Sver.




身体が温かくて、重い。
その重圧に耐えかねて目を覚ました。
目の前にいたのは一方通行だった。
私は一方通行にのしかかられていたようだ。
男の人としては軽い方なのだろうが、そりゃ重いわけだと嘆息した。

「一方通行……?」
「ンー、エサァ」

一方通行はそう言って、頭をぐりぐりと押し付けてくる。
その頭には白い三角の猫耳が生えていた。
ぴこぴこと動く耳に違和感はあったものの、不思議と以前からこのような姿だったように思えた。

「まだ早いでしょ。目覚まし鳴ってないし」
「だって腹ァ減った。メシ寄こせ、メシ」

目の前の生き物は白い尻尾を揺らしご飯をねだってくる。

「もうちょっと待ってよ。あと1時間」
「あァ?!1時間も空腹で過ごせってのかよ」
「だってまだ6時じゃない」
「……オマエがそォいうってンなら」

そう言って一方通行は顔を俯かせた。
納得してくれたのだと思った。
しかし、べろんと首筋を粘液が這う。

「ひっ!?」

……舐められた。
驚きのあまり目を剥く。
一方通行は私を楽しげに見下ろしていた。

「オマエのこと食っちまうけどイインだよなァ?」

白い三角の耳。長い尻尾。
こんなにも愛らしい姿をしているというのに。
うちの一方通行は凶悪な笑みを浮かべている。
そんな風に育てた覚えはないのだが……うちに来た時は既に大きかったか。
私は恐るおそる訊ねた。

「食うって……どっちの意味?」
「ご想像にお任せしまァす」
「んっ、」

一方通行は言い放ち、私の耳をカリと齧った。
なんだか変な声が出てしまった。
恥ずかしさに目尻に涙を浮かべた。
一方通行は身を引き、私をじっと見下ろす。
そしてぺろり、と涙を舐め取った。

「……っ」
「オマエもけっこォ可愛いンだなァ」
「……へ?」

普段ならば嬉しいのだろうが、この状況で言われても嬉しくない。
危機感を覚えるだけだ。
一方通行はニタニタと笑っている。

「オマエやわいから旨そうだよなァ」
「あ、朝ごはん何がいいの?」
「あ?オマエを食わせてくれンじゃねェの?」
「食・べ・ら・れ・ま・せ・ん!」

力強く言い放つと、一方通行は身体を起こした。

「ンーと、牛肉の和風角切り煮込み」
「……。ハイ」


PiPiPi...

「……」

電子音の音で目を覚ます。
なんだか、最近見る夢が卑猥だ。
一体どういうことなのだろう。
欲求不満なんだろうか。
嫌だ、嫌過ぎる。
私は盛大に溜息を吐いた。
しかも相手が毎回一方通行だというのが罪悪感を増大させる。
隣(と言ってもベッドの下だが)で寝ている本人には絶対に言えないな、と思い一方通行に視線をやった。

「…………」

いつも寝ている筈の一方通行はこちらを見ていた。
彼の白い頬は、僅かに赤い。

「……起き、てたの?」
「だって声が聞こえたからよォ。夢でも見てたかァ?」
「ね、猫に……噛まれた夢」
「……そォか」

聞かれてた。
本当は叫び出したいほど恥ずかしい。
顔を隠すように毛布に潜る。
今日は学校が無いことだし、二度寝することにした。




end
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