短編

□拍手
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夢オチシリーズ
G素直ニナレータ




「ふぁ……」
「はよ」
「……おは……よ?」

私が目を覚ました時、一方通行の赤い瞳と目が合った。
何故一方通行と同じ寝床に……?
目を細めている彼に戦慄しながら訊ねてみる。

「な、なんで?」
「悪いか?オマエの寝顔が可愛いもンで見てたンだよ」
「は……?」

今、さらっと可愛いって言われてしまった。
背中にじわりと冷や汗が流れるのを感じた。
一方通行の様子がおかしい。
明日槍が降りかねないほどおかしい。
私は一方通行の額に手を当ててみた。
至っていつも通りの体温だ。

「熱は……ない、ね」
「なンだよ、心配してくれンの?心配されンのは嬉しいけどよォ、別にどォってことねェっての」

額を触られた一方通行は照れ臭そうな顔をした。

「つか、オマエこそどォしたンだよ。挙動不審じゃねェ?」

一方通行は私の手を取って頬に当てた。
溶けるような笑みを浮かべた彼に私は思わず見とれてしまった。
すごく、可愛い。

「一方通行がおかしいんだよ。なんていうのかな、素直?」
「はァ?俺はいつもどォりだっての」
「いやいや、頭でも打ったんじゃないの?」
「そンなことよりもォ一眠りしよォぜ」
「え、ちょっ」
「あァー、すき。オマエがいるとほっとする」

一方通行の腕が背中に回り、ぎゅうっと抱きしめられる。
ぐりぐりと頭を押し付けられた後、首に吐息がかかるのがわかった。

「……しあわせだ」

背中越しに低く小さく、呟かれた言葉。
そう言われては抵抗できない。
私を必要としてくれる彼の髪をそっと撫でた。





なんだか温かくて、妙な安心感があった。
布団のように柔らかくはないのに、包まれてるような……。

PiPiPi...

「……ん」

目覚まし時計だ。起きなくては。
身体を起こそうとするがどうにも動かない。
眩しさに目を眇めると、誰かに抱きつかれているのがわかった。
どうやら私は一方通行と同じく床で寝ていたらしい。
寝ぞうが悪い覚えはないのだが、ベッドから落ちたのだろうか。

「あくせられーたー。放して、時計止める」
「むゥ」

拘束は緩まない。
それどころか抜け出そうとする私を逃がすまいと、腕の力は強くなる。
私は一方通行の頬を両手でぎゅっと挟んだ。
未だ寝ぼけている一方通行の眉間に皺が寄る。

「時計!止めたら戻るから!」
「……」

渋々、といった風に腕の力が緩む。
その隙に腕から抜け出し、目覚まし時計を止めた。

「……今日学校、ねェンだろ」

見ると一方通行は眠たそうに目を擦っている。
どうやら起きたらしい。

「ないけど」
「戻るって言ったよな。もォ一眠りしよォぜ」

その言葉で夢の内容を思い出し、心臓がどきりとはねた。
彼はこんな他愛もないことで幸せを感じてくれる。
恥ずかしいけれど、こんなことでよかったらいくらでもしてあげたいと思う。
一緒に眠る、ただそれだけのことで彼を幸せにしてあげられるなら。

「うん」



end
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