短編

□夏にハートが焦げるように
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※学パロ



強い日差しがコンクリートを照りつける。
今日は猛暑、このような時の日射は非常に暴力的である。
今日は屋上でメシは無理だな。
そう判断して一方通行は階段を下りようとした。

「一方通行、お昼一緒に食べよう?」
「あァ?……オマエか」
「オマエじゃなくてみょうじね」
「毎度毎度飽きねェなァ」

階段の下にいたのはみょうじだった。
クラスで孤立する一方通行にやたらと構ってくる存在だ。

「あれ、今日は屋上じゃないの?」
「この日差しの中食べるつもりってンならご自由に」

背後の屋上の扉を指差す。
みょうじはあーと間延びした声を出した。

「じゃあどうする?教室?」
「昼休みくらい教室から離れさせろ。空き教室行くぞ」
「空き教室?」

みょうじは知らないらしい。
一方通行が向かった先は3階の隅にある、通常の教室の半分のサイズの部屋だった。
少ないが机も黒板もあり、生徒以外のものは揃っている。
一方通行は隅にあるパネルを操作し冷房の電源を入れた。

「へぇ、こんな教室あったんだ。変な感じ」
「昔特別クラスに使ってたンだと」
「特別クラス……」
「俺みてェな力の生徒のクラスだろ」

みょうじは顔を曇らせた。

「一方通行は……特別クラスの方がよかった?」
「……いや?クラスの奴らはうるせェけど」
「けど?」
「オマエくらいはいてもイイしな」

一方通行は少し頬を掻きながら照れ臭そうに言った。
みょうじの表情がぱぁっと明るくなる。

「毎日お昼に誘った甲斐もあるってもんだね。私は一方通行の友達だからね」
「トモダチ……」
「ほら、もうご飯食べよ」

釈然としない一方通行を余所に、みょうじは適当な席に座った。
トートバッグから取り出したのは二つの弁当箱。
パステルカラーのものと、紺色のシンプルなものだった。
彼女は自炊しない一方通行を見かねて彼の分も作り始めたのだ。
一方通行は自分の分を受け取り蓋を開けた。
それは冷凍食品を使いつつも栄養と色取りを考慮されたものだったが、彼のお気には召さなかったようだ。

「肉が少ねェ」
「肉ばっかりだと私が作った意味ないでしょ。どうせ夕ご飯も肉だろうし」
「ハイハイありがとォございますゥ」

素直な礼の言い方もできない一方通行に、みょうじはくすりと笑った。
なんだかんだで全部食べてくれるこの少年は可愛い。
本人には決して言わないけれど。



食後、空の弁当箱を直していると白い封筒がひらりと舞った。
トートバッグに入っていたようだ。
一方通行はぱしり、とそれを掴むと興味深げに覗きこんだ。

「ンだァ?ラブレターかァ?」
「まさか!果たし状だったりして」

みょうじは一方通行から取り上げ封筒を確認した。
宛名はみょうじになっている。
中身を見てみょうじは絶句した。

「…………」
「おい、どォしたよ」
「ラブレターでした」
「…………マジかよ」
「マジでした……嘘でしょ」
「今時古風なこった」

一方通行が複雑げな表情でしつこくも手紙を覗き込んで来る。
さりげなくそれを避けつつ差出人の名前を発見した。
同じクラスの爽やかさんだ。

「誰からだ?」
「爽やかさん」
「は?……あァ、アイツか。モテるんだなァ、オマエ」

一方通行はしみじみと言いながらも気が気ではない。
ちらりと落ち着かない視線を送ると、みょうじは肩を落としていた。

「こういうの貰ったのは初めてだよ……あと一方通行のが大分モテモテ」
「俺が?嘘だろ」
「怖くて話しかけられないんだって。まぁかっこいいもんね」
「……そォか」

さらりと容姿を褒められ、一方通行は頬を赤くした。
彼は褒められ慣れていない。
そんな彼に気づかずみょうじは嘆く。

「あぁ、友達でいたかったのに」

その言葉に、一方通行の動きがピシリと停止する。
彼女が交際の申し出を断るであろうことは嬉しい。
しかし、自分が告白したとしてもそう言われてしまうのだろうか。

「俺も……か?」
「え?」
「それが俺でも友達でいたいか?」

「それ」が何を指しているのか、彼女にはよくわからなかった。
ただ「友達でいたい」に対し返答した。
それは残酷な返答だった。

「うん、一方通行はずっと友達だよ」
「……っ」

ダン、と壁の横に手をつかれた。
みょうじは目を皿のように開いている。

「……友達?俺はそれじゃ足りねェ」

怒りではないものの苦しげに吐かれた言葉。
彼は脈打つ心臓を抑えるように制服の胸ぐらを掴んでいる。

「……そんな風に想ってくれてたの?」
「あァ。好きだ、みょうじ」

ストレートな告白にみょうじの頬がみるみる赤く染まっていく。
至近距離で一方通行の真剣な眼差しに当てられて声も出ない。
それでも喉から言葉を絞り出す。

「……ずっと、片想いだと思ってた。好きでもなきゃ、毎日お弁当作ってこないよ」

赤い瞳が期待の色を灯した。

「私も一方通行が好き」
「みょうじ……」

そこでタイミングが悪いことにチャイムが鳴った。
一方通行は舌打ちをし、みょうじに近づけた顔を離す。
みょうじも教室に戻るべく弁当箱を入れたトートバッグに手を掛けた。

「みょうじ」
「ん?」
「今日、一緒に帰るぞ」
「……よろしくお願いします」




end...tittle by うばら

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