短編

□いびつでもいとおしい幸せのかたち
1ページ/1ページ

ネタがネタなのでR12




一方通行とみょうじは部屋でDVDを見ていた。
最もそれを持ちかけたのはみょうじで一方通行はあまり興味のない恋愛映画だ。
一方通行は寝転びながらもその退屈な恋愛映画にもいくらかの意識を向けてはいた。
しかしそれもやがて限界だろう。
彼の意識はみょうじの背中を見ながら夢の世界へと旅立とうとしていた。
だが、そこでみょうじの様子が僅かにおかしいことに気づき再び意識が引き戻される。
彼女は腰を引き、ベッドに凭れるように後ろに下がり、顔を俯かせている。
一方通行は液晶に目を移し、ははぁと合点がいった。
どうやらこの映画には濡れ場があったようだ。
みょうじは耳まで赤くし、気まずそうにしている。
その様子は愛らしく、彼の嗜虐心を刺激した。
絡み合う男女を尻目に一方通行はにやりと笑みを浮かべる。
みょうじに気づかれないよう起きあがると彼女の俯いた頭部を両手で固定し、正面を向かせる。
無理やり目に入るようにしたのは桃色の空間となった液晶だ。

「あ、一方通行?」
「せっかくレンタルしたンだ。しっかり見てろ」

そう囁きかけると戸惑っていた彼女はいっそう顔を赤く染める。
一方通行は己れの口端がつり上がるのを感じた。
みょうじは一方通行を見ようと目線だけ動かすが、首を固定されたままではどうにもならない。
顔を背けようとしながらも液晶が目に入ってしまう。

「だってこれ、」
「恥ずかしいか?」
「……うん」
「こンなンがァ?」
「うん、だからこの手、離して」
「却下ァ」
「――っ」
「お、反抗するか」

みょうじは一方通行の手を外そうと両手の力を込めた。
しかしこの少年、かなり強い力で彼女の頭部を押さえている。
まさか能力を使っているのだろうか。
そうだとして、15分もあれば濡れ場も終わるだろう。
みょうじは抵抗を諦め目を瞑った。
これで彼女に入る情報は音声のみとなる。
一方、一方通行はおとなしくなったみょうじを訝しげに覗き込んだ。
案の定そこには目を瞑ったみょうじがいた。

「…………」

まな板の上の魚、を彼は連想した。
この魚を煮る気も焼く気もない。
だがこのままにしておくのはつまらないのでちょっとだけ、味見をしようと思う。
しかし何かするにはこの体勢、色々と辛い。
一方通行はみょうじを解放すると彼女をこちらに向けて口付けた。

「……?!」

逃げようとするみょうじの後頭部を一方通行は押さえ、固く閉じた唇に舌を捻じ込んだ。
歯列をなぞり上顎を刺激し、奪うようなキスを続けていく。
どれほどの時間が経っただろう。
みょうじにとっては長いものだったように思えてくる。
ようやく唇を離すと一方通行はニィと目を細めて笑った。

「エロい顔」

みょうじの表情は蕩け、目をとろんとさせていた。
一方通行はちらりと液晶を横目で見る。

「ああいうコト、したくなったか?」

甘い声色で呟かれた言葉にびくりとみょうじの肩が跳ね部屋の入り口まで後ずさった。
過剰といってもいい反応に、そこまで拒否するほど嫌か、と一方通行は肩を落とす。

「……ごめんなさい勘弁して下さい」
「冗談だっての。別に無理やりしねェよ」
「ほ……」

みょうじは安心したように息を漏らす。
一方通行は遠くに行ってしまったままの彼女を手招きした。
先ほどのことがあったので、みょうじは警戒しながらも渋々といった様子で近寄ってくる。
そんな彼女にベッドを指差した。

「ここ座れ」
「……何するの?」

一方通行は沈黙した。

「何するの?」

みょうじはもう一度訊く。
答えるまでは警戒態勢を解かない表れだ。
一方通行はがしがしと頭を掻いた。

「眠ィンだよ。……膝貸せ」

随分と可愛い命令になんだ、とみょうじは笑う。

「それならお安い御用なのに」
「るせェ」

ベッドの縁に腰掛けた彼女の膝に、一方通行は頭を乗せる。
さっきまで憎らしかった彼は、穏やかな顔をしていた。
ちぇ、可愛いな。
みょうじは呟く。
液晶ではラストシーンが始まるところだった。

「映画、終わっちゃうよ」
「あァ、どォせこりゃハッピーエンドだろ」

そう言って一方通行は薄く笑う。
そんな彼の頬をみょうじはそっと撫でた。

「良いことじゃない」
「現実もそォなればな」




end...tittle by ロメア

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ