中編

□お題
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※パラレル時空

■彼に強引にされる5題
1.お前の席はここだろ?と手を引かれ隣に座らせられる
2.他の男を見てんじゃねぇ、と視界を奪われ何も見えない
3.誰が帰っていいと言った?と腕を掴まれ阻止される
4.反論はさせねぇよ、と口を塞がれ息もできない
5.本気で嫌がらねぇと、やめないぜ?と抱き締めて離してくれない


1.お前の席はここだろ?と手を引かれ隣に座らせられる

新しい高校、新しいクラス。
この春、私は高校に進学した。
ずっと憧れた高校に、頑張って受験して合格することができたのだ。
勉強についていけるか不安だけれど、頑張らなくちゃと言い聞かせる。
今日は入学式を終え、授業が始まる日。
私の隣の席にいたのは白い髪の男の子だった。
席に着く前、彼の赤い瞳と目が合う。

「おはよう。よろしくね」
「……あァ」

きれいな赤い瞳が一瞬驚いたように見開いた後、そっけない返事が聞こえた。
愛想のないタイプなのだろうか。
でも仲良くなれたらいいなと思いながら席に着く。



午前の授業を終え、昼時。
この学校は食堂で集まって昼食を摂るのが普通らしい。
日替わりAランチを注文して、お盆を抱えて席を探す。
だいたいの子は既にグループができていた。
しかし私には同じ中学校だった生徒はおらず、話しかけたクラスメイトは今朝の男の子しかいなかった。

――うぅ……一人で食べるの、恥ずかしい。これはグループに加えてもらうチャンスなのかな。

仲間に加えてもらうべく辺りを見回した。
条件はできるだけ近くにいて怖そうでない女の子の集まり。それだけだ。
すると窓の近くにフィーリングが合いそうなグループを見つけた。
お盆を持ってそのグループに近寄ると、腕が掴まれ、慌てて足を止めた。
幸い汁物はなかったため、お昼ごはんを溢さずに済む。
私の腕を掴んだのは窓際のカウンター席に座っていた、一方通行くんだ。

「オマエの席はココだろ?」
「え?」

でも、私が行きたかったのは……。
私はターゲットにしていたグループを見やった。
当然話したこともない女の子たちは私のことなど気にせず楽しそうに笑っている。
あのグループに私の居場所などないのだと思った。

「……ありがと」
「別に」

私は一方通行くんの隣の席に座った。
スプーンを手に取り、黙って手を合わせる。
頂きますと囁いてオムライスを崩しにかかった。

「何食べてるの?」
「ハンバーグ定食」
「おいしい?」
「冷凍の味だ」
「……そっか」





2.他の男を見てんじゃねぇ、と視界を奪われ何も見えない

この学校に入学して数週間が経った。
勉強には慣れてきたが、友達はなかなかできない。
クラスメイトと話はするが、なんとなく怖がられている気がする。
私が不良みたいなタイプなら納得できる。
でも髪は黒のままだしスカート丈も校則を守っている。
何故だろう。
首を傾げていると隣から低い声がした。

「ナニ首傾げてンだ」
「いや、どうしたら友達ができるかなって」
「……知るか」

一方通行くんは冷たいし何を考えてるのかわからない。
でも気が付くと隣にいる。
……そういえば彼も私以外のクラスメイトと話すところを見かけない。
一方通行くんは友達が欲しくないのだろうか。


体育の時間、今はバスケットボールをしていた。
体力に乏しい私にはちょっと辛い授業だ。
私の班が見学をしている時、黄色い声が聞こえた。
北瀬くんだ。

「すごい。北瀬くん一人で圧倒してる!」

他のチームメイトにもパスは回しているが、北瀬くんがいれば全勝は確実だろう。
そう思ってしまうくらいに力の差があった。

「あんなに強いと試合に当たりたくないなぁ……一方通行くん?」
「他の男を見てンじゃねェ」

後ろから、彼の手が私の目を覆う。
真っ暗で何も見えない。
彼の手首を掴み、離れるよう引っ張ってみるが動かない。

「見えないよー」
「見えないよォにしてンだよ」
「ほら、一応見るのも勉強のうちだと思うし。見せてよー」
「どォせ北瀬ばっかり見てンだろォが」
「北瀬くんが上手いから見るのは当然でしょ?お手本というか……」
「チームプレイとしちゃイマイチだろ」
「そ……そうかもしれないけど、見せない理由にはならないでしょー!」



体育を終え更衣室。
隣のロッカーを使う子がおずおずと聞いてきた。
ポニーテールの似合う女の子だ。

「みょうじさん、一方通行くんと付き合ってるの?」
「え?付き合ってないよ?」

そう見えたのだろうか。
互いに友達がいないからかもしれない。
その子は目を瞬かせながらそうなんだ、と言った。
まさか私と一方通行くん、勘違いされているのだろうか。




3.誰が帰っていいと言った?と腕を掴まれ阻止される

「ね、一方通行くんと私、付き合ってると思われてたよ」
「あァ?」
HRが終わった後、隣の席の一方通行くんに話かけることにした。
「昨日女の子から訊かれたんだよ。一人からたまたまそう思われちゃっただけならいいけどさ……」
「……他の奴にもそォ思われてちゃ問題か?」
「ん?」
「俺は構わねェけど」

一方通行くんは相変わらずに仏頂面で教科書を鞄に詰めている。

「好きな人とかできたら困らない?」
「……以外、いねェし」

一方通行くんがぼそりと呟く。

「え?なんて言った?」
「なンでもねェ」
「ええー…」

私は一つ溜息を吐き立ちあがる。
どうせしつこく訊いたところで答えたくれないのだと思った。
今日は諦めて帰ろう。

「ま、いいや。また明日ねー」

そう言って踵を返そうとすると腕を掴まれ動けなくなった。
いつかの昼食の時もこうだったなぁ、と一方通行くんの方に目をやる。

「誰が帰っていいと言った?」





4.反論はさせねぇよ、と口を塞がれ息もできない

一方通行くんと帰ることになった。
それなのに彼は何も言わず私の隣を歩いている。
居心地の悪さにちらりと見やると、赤い瞳を目が合った。

「オマエは、俺が嫌か?」

ぎこちなく、いつもと違う一方通行くんの様子に私は驚いた。

「嫌じゃない、よ……?」
「なンで疑問形なンだよ」
「だって……いきなりなんだろうって思うよ」
「そォか」
「そうだよ」

再び沈黙が訪れた。
それが苦手で、先程の話題についてもう少し付け加えることにした。

「んー、強引だなって思うけど、嫌じゃないよ」
「へェ」
「訊いたのは一方通行くんの方でしょ!今日は様子おかしいよー」
「それな、俺……みょうじのこと好きみてェ」
「…………へ?」
「それ言いたかったから変だったンだろォよ」
「う、嘘……信じられないよ」
「反論はさせねェよ」
「んん……っ!?」

唇が柔らかいもので塞がれる。
目の前には目を瞑った、一方通行くんがあった。
顔が瞬時に熱くなっていくのがわかる。
唇を離した一方通行くんはにやりと笑った。

「……強引でも、嫌じゃないンだろ?」


5.本気で嫌がらねぇと、やめないぜ?と抱き締めて離してくれない

一方通行くんは私の寮まで送ってくれるそうだ。
悪いから、と断っても遠慮すンなと付いてくる。
すると階は違うものの、同じ寮に住んでいることがわかってしまった。

「まさか同じ建物に住んでたなんて……」

愕然としてしまう。
一方通行くんのことは嫌いではないのだが、危機感を感じるのだ。
彼が後ろにいる今も、心の中では何かしらの警報が鳴っている。
と思っているうちに背後から腕が伸び、密着する。
抱きしめ、られている。

「っ……!?」
「みょうじ。返事聞かせろ」
「ま、待ってくれないかな!?まだ、ちょっと心の整理が……」
「待たねェ」

はァ、と息が吐かれ一方通行くんの顔が肩に埋められる。
ここは寮のエントランスだというのに。

「は、離してよ……誰か来たら……」
「離して欲しかったら本気で嫌がれよ」

一方通行くんの言葉で私は二つのことに気付いた。
一つは彼の腕に手を掛けてはいるものの、離そうとしていないこと。
そして二つ目は、

「本気で嫌がらねェから期待しちまうンだろォが」

この体温がいとおしく思えてしまったことだった。



end
 

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