長編

□現在
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休日の昼過ぎ。
一方通行は例のごとく近所のコンビニに来ていた。
飲料コーナーで新発売のコーヒーを手に取る。
今の銘柄が飽きたらこちらに変えてもいいかもしれない、と考えたところで聞き覚えのある声がした。

「一方通行センセ?」

よく通る声で呼んだのは片手を上げて挨拶しているショートカットの少女。
先日部屋に来たトモである。

「……オマエか」
「その節はどうもお世話になりました。っと、コーヒー相当好きみたいだね」
「まァなァ」

じゃ、とレジに向かおうとすると腕を引っ張られる。
「おォ?」
「ちょーっとお話があるからさ、この後お茶しませんこと?」
「あァ?!なんでオマエと仲良くお茶しなきゃいけないンですかァ!?」

凄んでみせるがトモは怯まない。
どちらかというと控えめなタイプであるナマエが一緒に暮らしている相手だ。
彼女は一方通行が見た目ほど恐れるべき人間でないと知っている。

「そんな邪険にしないでよ〜怖い顔してると女の子が逃げちゃうぞ」
「……」

頬をひくつかせる一方通行にトモは続けた。

「ナマエに関する大事なお話だからさ」



二人は近くのコーヒーショップに入った。
一方通行はブレンド、トモはカプチーノを注文し席に着く。

「でェ?話は?」
「せかすねぇ。じゃ単刀直入に言うよ。一方通行さ、ナマエのこと好きでしょ」

一方通行は一瞬、その場の時が止まったように感じた。
まさか第三者に悟られるとは思ってもみなかったのだ。
トモはニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら追い討ちをかける。

「図星かなー?ちょーっと勘が鋭い女の子なら見ててわかるよ」
「……」
「ナマエを見る目、熱が入ってるっていうかさぁ?」
「……だとしてもオマエには関係ねェし言わねェよ。何、俺と恋バナでもしたいンですかァ?」

トモは一方通行の発言を無視して続けた。

「元々私ね、部屋にお邪魔した時、一方通行がナマエに下心持ってたら追い出さなくちゃって思ってたんだよ。」

一方通行は息を飲んだ。
だってそんな人と暮らすのは危ないでしょ?とトモは続けた。
ただのお調子者かと思っていたが、奴は奴なりに考えていたようだ。

「でも一方通行を見てたらナマエと似たところがあるのに気づいた。寂しがりやな割りに人に対して消極的なとこかな。ナマエね、友達はいるけど溶け込んでいるようで溶け込んでないんだよ。時々会話に加わらず離れていってるというか線を引いてるところがあるみたいで」
「……」

一方通行自身、そういった話は初めて聞いた。
いや、似た者同士であることは以前どこかで……ナマエが、言っていたか。
自分を見ているようで放っておけないと。

「ナマエが特定の人をテリトリーに入れるのって初めて見たからさ。一方通行がナマエを好きだったら……その、あの子の心の鍵を開けて欲しいって思うわけよ。うっわ。自分で言ってて恥ずかしい」

トモは顔を掌で覆ってしまった。

「オマエ……友達想いなんだなァ」
「一方通行からそんな台詞が聞けるなんて……え、私憐れまれてる?」
「話聞けてよかった。じゃあな」

コーヒーショップを後にする一方通行の背に声がかかった。

「待って」

まだ何かあったかと振り替える。
走り書きされたレシートを手に押し付けられた。

「念のため、これ私のメルアド。半端な気持ちじゃ許さないからね」

じっと意思の強い目で見つめられ、思わず身じろぎしてしまう。

「……当然だっての。」

くしゃりと音を立ててレシートをポケットに入れ、店を出た。



To be continued...
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