長編

□Chapter3
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1月2日、一方通行は上条宅を訪れていた。
手には大量のお菓子を携えて。
インターホンを鳴らした後、玄関を開けたのは銀髪シスターだった。

「久しぶりなんだよ白い人!」
「よォ」
「ねぇ、手に持ってるのお菓子?食べていいの?」
「勝手にしろ」
「ありがとうなんだよ!早く部屋に入るかも」

シスターは菓子袋を受け取ると奥へ入った。
一方通行が靴を脱いで上がると上条の姿もある。

「久しぶり、今年もよろしくな。一方通行」

一方通行はじろりと上条を見た。
普通に話しかけた筈なのだが、不機嫌に睨まれ上条はたじろぐ。

「オマエ、ナマエとアドレス交換してやがったンだな」

そう言う一方通行は恨みがましげだ。
一方通行が不機嫌な理由がわからず、上条は瞬きをする。
確かに彼女のアドレスは以前助けたことのあるトモを通じて知っているが。

「……はい?なんかマズかったか?」
「不味い。アイツとあンま連絡取るンじゃねェ」
「こっちから連絡しないように気を付けるならできるけどさ、理由を聞かせてくれよ」
「…………」

一方通行は黙りこんでしまった。
上条はインデックスと顔を見合わせた。
インデックスは既にスナック菓子を頬張っているが。

「ナマエとは友達のつもりだし、納得する理由がないと、なぁ?」
「どうして?」

一方通行は沈黙の後にインデックスへと向き直った。

「……シスター。オマエ前来た時に俺を見て『また女の子連れてきて』っつったよな?」
「うん。言ったけど」
「上条って奴はよく女を連れ込むのか?」
「ううーん、よく考えたらそうでもないかも。とうまは鈍感だけどふらぐ体質?だから」

鈍感だけどフラグ体質……?
要は天然タラシってとこだろうか。
一方通行は眉を寄せた。

「白い人。もしかしてナマエって人のこと」
「……ッ!」

一方通行はインデックスの口を塞いだ。

「もごっ……!?」
「俺はコーヒー買ってくる」
「ふぁふぁひてほひいはも」」
「余計なこと言うンじゃねェぞ」
「わふぁっふぁんふぁよ」

一方通行が手を離すと黙っていた上条が口を開いた。

「あー上条さんにはサッパリなんですが、」
「オマエは追求すンな!」

一方通行は一旦部屋を出るとコンビニへ向かった。
上条が天然タラシであるならば尚更ナマエを近づけるわけにはいかない。
敵は極力排除しておきたい。

上条の住む寮に戻ると、ドアの中からシスターの声が聞こえた。

「とうまは不幸だからとらぶるにならないためにもナマエって人とは距離を置いた方がいいんじゃないかな。だってとうま、転んだだけでもナマエって人の胸掴みかねないかも。白い人はきっと怒るんだよ」
「ハイハイわかりましたよー。うう、さよなら俺の癒し」
「それから初恋は実らないとかぜったいに言わないようにするんだよ!」
「は、ハツコイ?」

初恋は実らない。
ドアノブに触れかけた手が止まった。
思えばナマエに会うまで恋と名のつくものをしてこなかった。
能力が開花してから、まともに好意を向けた人すら初めてなのだ。
もし、実らなかったら。
ナマエに好きな人ができてしまったら。

――黙って身ィ引けってか?

無理に決まってる。
一気にドアノブを引いた。
先程の話題のせいだろうか。
妙な沈黙の後に二人は口を開いた。

「一方通行、おかえり」
「お、おかえりなんだよ。こーひー買えた?」
「あァ」

シスターとしては先程の会話は善意からくるものなのだろう。
彼女は冷や汗を掻いていた。
シスターのフォローもあることだ。
上条にナマエと連絡を取らないよう口喧しく言うのはやめることにした。


その後、上条とはテレビゲームをすることになるのだが

「俺にパズルゲームを挑むってェのはどォかしてンじゃねェの?」
「不幸だああああああ」

といったやり取りがあったのはまた別の話だ。




to be continued...
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