銀時×月詠 短編

□酒涙雨
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※銀時×月詠 おつきあい前設定




「酒涙雨」






「吉原にとって初めての七夕なのに残念だわ」


吉原の開いた天井を見上げながら日輪はつぶやいた


七月七日― 今日は七夕で一年に一度織姫が天の川をわたって彦星に会えるという日なのにあいにくの雨でその様子が全く見えない


「今は梅雨の時期じゃ ほとんど雨が降る時期なんじゃから当り前であろう」


たまたま非番だった月詠がひのやの軒先でふっと紫煙を燻らせる


「まあね 現実的なこと言えばそうだけどさ 織姫と彦星は一年に一度しか会えないんだよ それに―」


日輪は車いすを動かしひのやレジ奥の箪笥から一枚の短冊を持ってきた



「こうやって願い事を書いて葉竹に飾る― これもロマンチックだろ? はい 月詠」


そういうと白い短冊を渡された これに願い事を書けというのか―


「日輪 わっちはもう百華で願い事は書いてきたぞ 複数書くなんて・・・」


「それは吉原での願い事だろ?それは地上―万事屋さんの葉竹用だよ」


「万事屋用?!なんで・・・?」


「昨日誘われたんだよ 新八さんの家で天の川を見ようってみんなで企画したんだって 晴太も誘われている方行っておいで」


「しかし―」


「いいんだよ たまの休みなんだから楽しんでおいで 明日は夜勤だろ?明日の夕方までに帰ってくればいいから」


そういうとぽん!と日輪は月詠の背中をぽん!と優しく押した


照れくさそうに短冊を眺めながら「・・・・そうじゃな」と月詠は優しく微笑みながらうなずいた








*********







ここは志村妙新八姉弟が住む恒道館―



妙たち女たちは夕食つくりの真っ最中・・・のはずが妙が料理を作るとアレ(暗黒物質)が出来てしまうのでなぜか志村家の台所に立っているのはお登勢 たま 万事屋社長坂田銀時 志村新八の4名であった


「銀さんたち大丈夫かしら やっぱり女の私がお料理変わった方がいいんじゃないかしら 新ちゃん」


台所の様子が心配になってやってきた妙を慌てて新八がなだめて追い返す いつもの光景である


「ふー 姉上が料理すると残念なアレになっちゃうから笹飾りの手伝いにして本当によかった」


新八が深いため息をつく


「新八 妙をいいかげん料理教室にでも連れて行った方がいいんじゃないかい?」


お登勢が呆れ顔で新八に問いかける


「駄目ですよ 一回行きましたけど酷い有様で 料理教室をクビになっちゃったんですから」


台所にいる4人一斉にため息をつく


「そういえば銀時 晴太も誘ったんだって?」


「ああ アイツもたまにはババァや神楽や新八の顔が見たいだろうから誘っておいた」


そういって背を向けて野菜を切りはじめた銀時を確認してお登勢にそっと耳打ちする新八

「違いますよお登勢さん 晴太君は口実で月詠さん―」


「あーーーー?なんか言ったかい?新八くぅーん」


新八が嫌な予感がしたので後ろを振り向くと銀時が包丁を持って大根をブスブス刺していた


「いやいやいや!何でもないです!銀さん変なもの振り回さないでくださいよ!」


そんなやり取りを見ていたお登勢は呆れながら深い溜息をついた


「まったく意地っ張りだね アンタは」







***********





時刻は夕方―



恒道館の玄関の前に立つ月詠と晴太



「ごめん下さい」


一声声をかけた     反応なし



「ごめん下さい 新八 妙殿 おるか?」



・・・・・・・・・・・・どっかーーーーーーん!



すごい破裂音と皿がわれる音がした


あわててブーツを脱いで音のする方へ出向くとそこは―宴会なのかただの喧嘩なのかわからないある意味惨劇の場のようだった


まず妙にしつこく絡んでいるのは―真選組局長近藤勲


「お妙さ〜ん!俺短冊に何書いたか知りたくないですか〜?」


もう完全に酔っている その証拠に半裸・・・じゃなくて赤褌でお妙に迫っている


「知りたいわけないでしょ やめてください」


紅い顔で妙にすり寄るゴリラ・・・じゃなかった近藤


「<お妙さんと結婚して幸せな家庭を築けますよ・・・・・・ぶべら!!!!」


最後まで言い終わる前に妙の拳が近藤の腹に一撃HITした


「ふざけんなよ テメーと結婚なんてするわけないだろ!」


それでもゾンビのごとく復活して妙に言い寄っては鉄拳制裁をあびる・・・・カオスその1


そして食べ物を一口入れてはキック 一口いれてはパンチ 神楽は真選組一番隊隊長沖田総悟と真剣勝負 やりあってる


「オマエ私になんでちょっかい出すアルか? わはにひほれへるアルは(私に惚れてるアルか) もぐもぐ」


「だーれがお前みたいなちっぱいに惚れるかよ!」


「あーーー!一番気にしてることを・・・・ゆるはなひアル(許さないアル)」


フツーなら好きな者同士見つめ合っていい雰囲気になってもいい感じなこの二人であるが―ケンカップル万歳なのでこれもある意味いちゃらぶnなんだろうが・・・・カオスその2


「山崎さま これ 山崎さまへ私からのプレゼントです」


「たまさん・・・・・・・・・俺・・・・俺ぇぇぇぇ!」


何かの包み紙をたまからもらってうれし泣きする真選組監察 山崎退


「開けてもいいですか?」「どうぞ」


山崎が包み紙を汚く破りながら たまに鼻水をすすりながら中身を見ると・・・・・




あんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱん・・・・・・



「山崎さま あんぱん好きだって銀時さまがおっしゃってましたので」


たまはにっこり笑顔で微笑む


その笑顔にがっくり来た山崎も泣き笑いでたまがくれたあんぱんを喰らう


「よかった 喜んでくださって 残さず召し上がってくださいね」


あんぱんは夕に10個はあるようである・・・・・・カオスその3





***********




月詠が呆れながらもその光景が楽しいと見えて微笑んでいるとそこに真選組副長土方十四郎が月詠の肩をぽんと叩いた


「土方殿・・・」


「よう アンタも呼ばれたクチか?」


「ああ 銀時は?」


「万事屋なら・・・トイレだ 俺と飲み比べしてな お互いにトイレにこもってた」


まったく似た者同士じゃ 呆れる顔の月詠に土方は


「ちょっと煙草でも吸ってくるがアンタも吸うか?」


スモーキングタイムに誘われた


そういえば恒道館に来てから一服もしていなかったことを思い出しその誘いを断る理由がなかった


二人で縁側に腰をおろし土方は煙草をくわえた マヨネーズ型のライターを取り出して火を点けた


月詠も煙管に刻み煙草をつめてマヨネーズ型のライターを借りて火を点けた


二人で紫煙を燻らせて一息ついた


「アンタら吉原の人間も織姫と彦星の神話なんて信じるのか?」


袂から見えた短冊を目ざとく見つけたらしく意地悪な質問をしてくる土方


「こ・・・これは日輪がやってこいというから・・・」


いつも冷静沈着な女が顔を真赤にして慌てている こんな反応を見るのが楽しくて土方はさらにからかった


「なんで願い事書いたんだよ」


「土方殿? 人が悪いぞ」


いつもならそんなことをいってからかったりしないのに―おかしなと思っていたその矢先―


「おーーーーい大串くん 何やってるんだよ」


さっきまでトイレにこもっていたはずの銀時が土方の方をポンとたたいたと同時にグイッと肩を引っ張った


「なんだよ 俺は百華の頭とスモーキングタイムしてただけだぜ テメーにとやかく言われる筋合いはないぜ」


銀時が掴んだ手をぱん!と払う


「それともなにか?テメーヤキモチかよ ああ怖っ!男のヤキモチなんざ みっともない!」


「ふ・・・・・ふざけんなよ なんでヤキモチなんてやくんだよ俺が!」


そういいながら上等だ!と叫びながら雨の中恒道館の庭先まで走って行き刀と木刀を振り回そうとしていた


「銀時!土方殿!やめないか!!」


そういうと月詠のクナイが雨の恒道館の庭をひゅっと飛び二人の頭に突き刺さった





**********




「まったく本気で投げんなよ 侘びに酌しろってんだ」


「そんなに痛かったか? ぬしたちがアホなことしてるからじゃ」


クナイが刺さった場所に絆創膏を貼ってもらい悪態をつく銀時と困り顔の月詠が恒道館の縁側に座りながらお猪口を差し出す銀時


銀時と月詠以外のみんなは―


真選組の近藤 土方 沖田はこれから仕事だと言って真選組屯所に戻って行った


妙と新八と神楽と晴太は疲れ果ててしまい寝てしまった


たまはスナックお登勢の仕事があるので仕事場へと戻って行ったが山崎は送って行くと聞かず一緒に出て行ってしまった



今この場所で起きているのは銀時と月詠だけである



「まったく七夕とは名ばかりでみんなやりたい放題じゃな」


「はは・・・まあな そんなの口実な連中ばかりだぜ たのしければいいだろ?」


月詠に酌をしてもらった酒をぐいっと飲み干す


「さっきまで土方殿のと飲み比べしてたのにまだ飲むのか まったく呆れてものが言えぬわ」


「・・・・オメーに酌してもらう酒は・・・・ちげーんだよ」


「え?・・・・・・」


ガラにもなく本気モードが出てしまった 銀時はしまった!と思ったがもう取り消しは効かない


誤魔化すために話題を変えようと慌てながら銀時が口を開いた


「なあ 短冊になに願い事書いたんだよ オメーの事だから<吉原が平和でありますように>とか書いたんだろ」


「それは吉原の短冊じゃ」


「じゃここで飾るのはなんて書いたんだよ」


「ぬしに言うわけないじゃろ」


「なに照れてんだよ 見せろって!」


ダメじゃ!と袂に隠してあった短冊を丸めて捨てようとしたが間髪入れずに銀時がそれを奪い丸めた短冊を広げた


「なになに―<織姫と彦星が今日会えますように>・・・?なんだこりゃ?」


「・・・二人は一年に一度しか出会えないんじゃ せめて七月七日くらいは会わせてやりたいんじゃ なのにこんな雨で・・・」


その時の月詠の憂い顔に銀時はドキッとした 妙に色っぽい 


なんだ?!俺なんでこんなドキっとしてんだ?! このアマ妖艶すぎんだろ!おぼこのくせに〜!腹立つ!!


「まあ・・・・なんだ・・・・きっと会えるよ・・・・なあ知ってるか」


あわてて平常心を取り戻そうとして膝を叩きながら月詠に問いかけた


「七月七日に降る雨って酒涙雨(さいるいう)って言うんだ 織姫と彦星が流す雨のことなんだよ」


「酒涙雨・・・・」


「だから二人の流す涙が枯れたら・・・雨が上がって二人は会えるぜ ほら」


そういって指を指して天を仰ぎ見るように促すと雨がいつの間にか上がって空に青空が広がった


そして徐々に綺麗な星屑の塊が広がってきた そうまるで川のように天に降りそそいでいる


「あれは・・・・天の川か・・・・?」


「ああ 今頃織姫と彦星はイチャコラしてんだよな・・・・腹立つなぁ・・・・・・俺達もする?」


どさくさに紛れてなんかすごいこと言っちまった・・・か?俺ぇぇぇ!


こえーな 月詠どんな顔してるか・・・・・ああ怒ってるよな・・・・やべーよ!


おふざけっぽいナンパをしてしまい(まあほとんと本気なんだが)おそるおそる振り向いたら月詠は顔を真赤にして硬直していた


「・・・銀時 わっちが本当に短冊に書きたかったことは・・・ん! ぅぅ・・・!」


言い終わる前に銀時の顔が近づき唇を重ねた


軽く触れるだけの口づけ


銀時もそうだが月詠の息も上がっていた


全く拒否するそぶりを見せなかったので「なぁ・・・もう一回・・・」そういいながらまた口づけを交わす


今度は触れるだけではなく深い口づけ


銀時の舌が月詠の薄めの口角をなぞる 少し口が開いた隙に舌を入れ月詠のそれを探す


月詠の舌を見つけそしてとらえ絡める


月詠の態度が豹変して暴れ出すまでその深い口づけは続いた









「ぎんときぃぃぃぃ!酒が足んねーーーーぞ!」


「は・・・・はい!! 今すぐ・・・・・って酒飲んだあとにキスなんてするもんじゃねーな・・・トホホ」


「あ?! くだらないこと言ってないで酒もってこーーーーーい!!」


月詠が暴れて大騒ぎしているとするっと袂から短冊がひらりと舞い落ちた


その短冊には流れるような字でしかも達筆な字で何かが書かれていた





<好きな人と結ばれますように>









END!

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