日常

□七回目
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「草汰」

声が聞こえたので振り返れば、

 
ちゅう
 

「……」

「隙ありすぎだっつの」

にっと笑う赤髪に唇を奪われた。本日6回目。


「ばか」

「赤くなって言うのは逆こーか」

今日の放課後 図書室でレポートの資料を探しに来ることは勿論こいつ、芹には一言も言ってない。
しかもここは滅多に人が来ないであろう地味な資料コーナーの隅。

「なんで場所、わかったの?」

「ん〜 勘?」

なわけあるか

にやついている芹を一瞥して、棚にならんでいる本に目を向ける。

「はいはいそうですか。俺はレポート書かなきゃいけないの」

「つれねーなあ、俺に会いたかったんじゃないの?」

「ちっ……違うし」

「ったく」

顔が火照るのを感じる。超恥ずかしい。
芹は楽しそうに短く笑うと、真っ直ぐに目を向けてきた。

「んな可愛い顔すんな」

二重の大きい芹の目が近づき、焦点があわなくなった。反射的目を閉じる。


っちゅ


本日7回目。
でも ただじゃ終わらなかった

「ん〜っ!」

異常にキスが長い。
何度も口を啄むように、互いの唇を確かめ合うようにして、重なる。

耐えきれなくなった俺の身体は酸素を求め、口を開いた。
しかし芹はそれを待っていたかのように、口を開けた途端するりと舌を絡めてくる。

「っあ…は……あ、んっ」

全身に力が入らなくなる。
こんなに激しいキスは初めてで、くちゅくちゅと甘い音が身体中に刺激を与えるように優しく刺さる。
芹の舌は想像以上に柔らかく、熱かった。
しかし、そんなことを思う余裕は行為の激しさにすぐ掻き消され、俺は遂に芹にもたれ掛かった。

「せ、り…」

「……坊っちゃんには刺激が強すぎたかな?」

床に座った芹の膝に頭をのせられた。
もう、喋る気もでないくらい疲れきっていて。
やや霞んだ視界でやっと芹を見つける。

「ったく、んな艶っぽい顔すんなよ 犯すぞ?」

「しね」

「ははは、元気じゃねえか」

こんなふうに笑う芹はどこか大人っぽくて、俺は芹のこの笑顔に惚れてんだと気付いた。

恥ずかしいから、言わないけど
 
 
 
 

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