B

□寂しい
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藤崎家、花瓶に挿したガマズミの花の側、
仲睦まじい双子が並んでソファーに座っている
 
「つーばーきー」
 
「なんだ藤崎」
 
「ゲーム終われよー」
 
「何故だ。やれと言ったのはキミだろう」
 
 
そう言う椿のコントローラーを持つ手は常に忙しく動いている。
 
 
 
確か三時間ほど前だったか、
藤崎はゲーム音痴な椿の泣き顔を見る為に上級者向けアクションゲームを勧めた。

早く音をあげないかと心待ちにしていた藤崎だったが……、
 
 
 
「つーばーきー」
 
「見ろ愚か者、ボクは今ボス戦をしているだろう。口を慎め」
 
想定の180°真逆の結果、
負けず嫌いな椿はゲームに没頭。現在に至っては一度も藤崎に目を向けることなくボス戦に全力を注いでる。
 
 
 
「……つばき、」
 
「…………」
 
 
「つーばきー」
 
「………………」


遂に椿は返事をすることさえ止め、部屋のなかにはカチカチとボタンを押す音だけが響いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「……!
よし!どうだ!遂にボスを倒したぞ藤崎!」
 
遂にボスへ最後の一撃を喰らわせた椿はやっとコントローラーを机上に置いた。

「…………。」
 
「? 藤崎?」

返事がない。当の藤崎は、三角座りをして小さくなっている。
 
 
 
「ふじさきー」
 
 
 
つん、

 
 
 
 
 
つんつん、

 
 
 
 
 
つんつんつんつガバッ!!

 
 
「うお!?」
 
藤崎は急につつかれていた背中を起こし、椿に抱きついた 
 
 
「な、なんのつもりだ藤崎ッ!」
 
赧顔を紛らわすように声を上げる椿、
 
 
 
すると聞こえてきたのは 
 
「……無視すんなよ〜……、」
 
嗚咽まじりのか細い声。
 
「俺、寂しくて死ぬかと思った」
 
 
「……ふ、」
 
椿は藤崎に気づかれないように静かに頬を緩ませると藤崎の背中にゆっくりと手をまわした。

 
「本当にキミは子供だな」
「るせーっつーの!」
 

悪態をつく双方であったが、
背中にまわした手を離すことはなかった。

 
 


 
 
 
 
 
 ガマズミー無視したら死にますー
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