□赤い嫉妬
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朝露が煌めく森の中、小鳥のさえずりが響き渡る。

 
 
「ソフィアっ!」
 
「ん、フレイキー」
 
とてとてと、
向こうから走って来たのは中性的な顔立ちの友達。
深紅の髪が柔らかく揺れる。
 
 
 
ぎゅっ

 
 
「きゃっ!?」
 
「今日は幸せだなあ、朝からソフィアを見つけられるなんて」
 
「フレイキー、恥ずかしいよ……」
 
最近フレイキーはずっとこんな調子で、すぐに抱きついたり、頬にキスをしてきたり。
 
いくら友達でも恥ずかしくなってきてしまう。

少しだけ腕に力を入れてみるが、案の定より強く抱き締められた。
 
「ふふ、ぼくのこと意識してくれてるんだね。嬉しいなあ」

むしろ逆効果。

「……もう、」

しかし、フレイキーのふにゃんとした笑顔を前にするとどうすることも出来ない私も私だ。
 
 

 

「ん……?
ねえ、この匂い、ナッティーの匂いじゃない?」




急に、フレイキーの声のトーンが低くなる。

「あ、あぁ 昨日遊んだから……」

感じたのは、愛情じゃなく恐怖。

「ソフィアは、ナッティーが好きなの?」
 
 
初めて聞く抑揚のない声は、普段のフレイキーからは想像も出来ないもので、

 
「友達としてなら……好きだけど」
 
「ぼくも、ナッティーと一緒?」
 
純粋な子供の、素直で残酷な狂気。

「フレイキー……?どうしたの「答えて」
 
 
ちく

 
私の腕に触れていた柔らかく紅い髪が、段々と固くなっていた。

 
「っ……!」

 
痛い。怖い。
視界が潤む。

 
「なんで泣くの……?
ねえ、そんな悲しい顔しないで?」

ただ、ぼくは君に好かれたいだけなのに。
 
 
 
針葉樹に留まった青い鳥が二人を見下ろす。

 
 
「ねえ、好きっていってよ……ッ!!」
 

恐怖で口を開くことができなかった私の身体を、紅い針が貫いた。



幸せな朝は、赤く染まり。
倒れた一人と立ち尽くす一人。


 
 
 
「明日こそ、ぼくを好きになってよ?
ソフィア……、」
 
 
 
 
 
 

歪んだ一人はぼろぼろと涙を溢した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カーネーション赤―猛烈な愛―
 

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