□花占い
1ページ/1ページ



すき



ぷち



きらい



ぷち



すき




ぷちん




「きらい……」



ずーん、と項垂れる。


これで268連敗。
ついに日が暮れてきた。

ランピーの足元、土を染める朱の花弁はもはやカーペットのよう。

「うわあっ 花畑が無くなってる!!?」

向こうのほうから驚愕に染まったカドルスの声が聞こえるが、いちいち相手をしている暇もない。

儚げに揺れる最後の1本をなんの躊躇いもなくぶちっと引きちぎり、花弁に手をかける。



と、


「ランピー?」

「うわああぁあ!?」

突然彼女の声が聞こえたから、
俺は大袈裟に仰け反ってしまった。


「な、なによ……」

訝しげな顔をして俺の顔を覗き込む。

「き、急に来るからびっくりしたの!!」

「そんなに慌てなくても……あ、何か見られたくないことでもしてたの?」

図星。
なんで女ってこんな勘良いんだよ……!

「いや、俺花占いとかしてないからね!!」

必死にマーガレットを背中に隠しながら、上ずった声を荒げる。

「はなうらない……?」

し、しまった……!!

「ふぅん」

一瞬、彼女が何かものを思う顔をした気がした。
でもそれは、すぐ愛らしい笑顔に覆い隠される。

「ランピーもお年頃なんだねっ」

「あっ!」

ソフィアはいたずらっぽく笑いながら、ひょいと花を取り上げる。

「じゃあ私も、やってみようっと」

俺の左隣、ベンチにちょんと座る。

「……ソフィアも好きなやつ、いるんじゃん」

唇をつきだしておどけてみたが、胸の痛みはずきんと鈍く痛んだ。

ソフィアは勿論気付いていないようで、ぷち ぷちと恋占いを始めた。


「すき、きらい、すき」

俺はただ、それを見つめる。

「きらい、すき」

やっぱ 無理。

俺はソフィアからマーガレットを奪い取った。


「なにすんのよ」

「誰」

「え?」

「占いの相手、誰なの」

ソフィアが他の誰かのことを想いながらやってるって思うと
どうしても嫌な気分が押さえられなくなる。

「恋占いが成功したら教えたげる、だから返して」

「断る」

「もー」

「おれが、俺がやる」

俺は残り少なくなった花弁をちぎり始める。




きらい



すき



きらい



すき



きらい



すき



きらい……





すき。



「あ」


269回目


「ランピー」


やっと


「なに」


叶った。


「すき」



……?


「え?」

「に 2回目なんて、ないんだからバカ」

リンゴのようにあかく染まっていたソフィアの頬は、確かにそこにあった。

信じられない、すげえ 嬉しい。


「俺も、すき」

「え」



269度目の、正直。
 
 
鮮やかな朱が舞うなか、俺はソフィアを抱きしめた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
marguerite―恋占い―


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ