名前で呼んで
□round4「な、なんだか牡丹を思い出すわ・・・」
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「それはそうと、あんたちゃんと家事とか出来るんでしょうね?住まわせてあげるんだから、多少の手伝いはやってもらうわよ」
「市子ちゃん、私は?」
「えりかちゃんはお客様だからダメ」
なんか申し訳ない・・・。
「市子、家事が出来るかどうかは自分に言うのが先なのでは・・・」
「う、うるさいわね!ちょっと苦手なだけじゃない!」
「家事、ですか・・・それだけでよろしいのですか?」
「え?」
お借りしますね、と近くにあった掃除用具を手に取り、せっせと掃除を始めたアイちゃん。
せっせというか、シュッって感じだけど。
とにかく動きが素早い。
「な、なんだか牡丹を思い出すわ・・・」
「あの子こんな感じだったんですか?」
「どことなく似てる・・・」
「終わりました、次は台所をお借りしますね」
は、早っ!?
仕事が早すぎるよ、アイちゃん・・・!
三人で固まっていると、紅葉ちゃんがふぅと溜め息をついて、何やら話し始めた。
「あの人、本当は私より立場は上なんですよ?」
「え、そうなの?」
「紅葉ちゃんの事様付で呼んでたから、てっきり紅葉ちゃんの方が偉いのかと思った」
「今すぐにでも死神の長になれるんじゃないかって程の力の持ち主なんですよ。だから怒らせるとやばいんです」
長って、一番偉い人のことだよね。
そんなに凄いんだ、アイちゃん。
「でも、そんな凄いのがなんであんたなんかを慕ってんの?」
「い、市子ちゃん!それは失礼すぎるよ!」
「ほんとですよ全く・・・。まぁ良いでしょう、私は心が広いですから」
紅葉ちゃん・・・青筋が立っているのは私の気のせい?
「で?なんであんなに懐いてるわけ?」
「それは・・・」
「出来ました!赤ワインで煮込んだビーフ入りカレーオムライスです!」
「うわびっくりした!」
いつの間に作り上げたのか、アイちゃんが持っているお皿(三人前持ててる・・・意外と力持ち?)には、綺麗に盛り付けされたカレーオムライスが。
「さあどうぞ召し上がれ。あ、紅葉様にはデザートが付いてきます」
「おい差別」
「失敬な、偏見です!」
「もっと酷いわ!」