ほん

□叶わぬ恋でも
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叶わぬ恋ならの佐田Ver.


たぶん、好きなんだ。
ずっと言えずにいるけど、おまえの事を好きになっている。


すぐに惚れちゃっただったんだと思う。
第一印象としては、すごく可愛い、ほわほわした女子だな、って感じだったのに。
サッカーをし出した途端、雰囲気はかわり、不覚にも心を奪われた。
そのあとで、性別を知っても気持ちは揺らがなかった。


「佐田」

雛乃がいつものように俺の所へくる。
だから、おれは嬉しくて、顔がほころんでしまう。

「雛乃、どうした?」

おれが笑いながら聞く。
そうしたら、雛乃もまた、嬉しそうに笑う。
正直、雛乃に話しかけられるたびに嬉しくてたまらなくて、ついいっぱい話をしてしまう。

「ふふっ、髪の毛にゴミがついてますよ」

くす、と笑って近付いてくる雛乃。
この時点でだいぶドキドキしてくる。
なのに、雛乃はお構いなしに、そのまま頭を撫でてくる。

「雛乃」

さすがに絶え切れなくなって、雛乃の名前を呼ぶ。

「なんですか?」

雛乃はにこり、と微笑んでそう聞いてくる。

「雛乃の手、好きだけどさ、でも恥ずかしいからやめろよ」

たぶん、少しだけ顔赤いんだろうな。

分かってる。
こいつはこういう奴だから、期待なんてするだけ無駄なんだろうな…。


そもそも、こいつを好きになったのが間違いだったんだろうな。
でも、雛乃の事が好きなんだ。

叶わぬ恋だとは、わかっているさ。
だけど、もしかしたら、の可能性があるのなら諦めたくない。

そう考えていたら、雛乃が泣いているのに気付く。
あまりにも急だったから、すごく驚いた。
「どうした?」

雛乃にそう聞くも、雛乃自身も涙に気がついていなかったらしく、少し動揺が見える。

「目にゴミが入っただけだと思います。佐田は心配性ですね」

そうやって、くす、と笑う雛乃がどう見ても無理しているようにしか見えなくて、とても儚く見えて、無性にその存在を確かめたくなった。
さすがに、抱き締めるとかはできやしない。だから、手をぎゅっと握った。

「えっ、佐田!?」

雛乃はそんなおれに驚きつつも振りほどこうとはしない。

「雛乃、おれはさ、雛乃のこと、……好きだからな?どうしたかしらないけど、元気出せ」

そう言って、に、と笑う。


例え叶わないような恋でも、容易に諦めたくはない。
どうせ諦めるのなら玉砕してからでもいいからな。




Fin.

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