ほん

□叶わぬ恋なら
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好きなんですよね。
ずっと言えずにいるけど、あなたの事が好きなんです。

たぶん、これからも言えないですけど。

恋に落ちたのは割と早い段階でした。
こいつになら、背中を任してもいいと思えた相手…。
はじめてでした。
あんなに、信頼したのは。


「佐田」

僕はまた懲りずに佐田の所へいく。
そうしたら、佐田は、犬みたいに人懐こい笑みを浮かべて

「雛乃、どうした?」

と言うんです。
佐田に話しかけるたびに何らかの言い訳を考えては、僕は佐田といっぱい話をするんです。

「ふふっ、髪の毛にゴミがついてますよ」

くす、と笑って佐田に近寄る僕。
髪の毛にゴミがついていたのは本当なので、取る為に僕は手を伸ばすと、ゴミをすぐに取り、佐田の頭を撫でる。

「雛乃」

頭を撫でていた僕を不審に思ったのか、佐田が名前を呼んでくる。

「なんですか?」

僕はにこり、と微笑んでそう聞く。

「雛乃の手、好きだけどさ、でも恥ずかしいからやめろよ」

そういう佐田の顔は少し赤らんでいた。

脈アリのように見せて、佐田は、こういう事をいろんな人にしている。


そもそも、男を好きになったのが間違いだったのでしょうね。
でも、佐田が好きなんです。

叶わぬ恋だと、知っています。
わかっています。
だけど、今はこの甘くて酸っぱい気持ちを堪能していたいです。


頬に伝う涙に僕は気付かない……。




Fin.

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