ほん

□言葉よりも確かな慰め
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「ぎゅってして離さないで」

雷門に敗北をしたあと、佐田は自分たち2人以外には誰もいない更衣室で雛乃にそう言った。
雛乃は、そんな佐田に驚きはしたものの、文句などはいっさい言わずに、佐田をきつく抱き締めた。

「どうしたんですか、キミは…」

抱き締めたままで雛乃が聞く。
離さないで、というのが佐田の要望なのだから、離すつもりなんかさらさらないらしい。

「…おれは、すごく不甲斐ない、ちっぽけな存在だよ」

ぽつり、ぽつり、と佐田は自分の心境をさらけだしていく。
どうにも、佐田は、新雲が雷門に負けたのは自分のせいだと思っているみたいで、そこから、今のような心境に至ったみたいだった。

「おれが不甲斐ないせいで、雛乃にも、迷惑かけたよな。…もう少しおれがやれたら、雛乃はおれのカバーをしなくてすんで、ベンチにいかなくてすんだのに……」

「馬鹿ですね、佐田は…。迷惑なんかかかっていません。それに、キミのカバーをぼくは必要以上にしていたから下げられたんです。佐田は、…土佐丸は、悪くない……」

そう言って、佐田に慰めの意を込めたキスをする。
まるで、親が子にするようなものだったが、佐田はそれで少しだけ気が楽になったようだった。

「ありがと、…雛乃」

そう言う佐田の頬は少し赤らんでいた。

「ふふ、どういたしまして。それじゃ、帰りますよ」

雛乃がそう声を掛けたら佐田は、抱き締めてもらうのをやめてもらい、雛乃の手をとり、歩き出した。



おわり

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