D.Gray-man
□第2夜
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「いいねぇ青い空、エメラルドグリーンの海、ベルファヴォーレイタリア♬」
「だから何だ」
「何だ?フフン♫……羨ましいんだい!ちくしょーめっ」
任務が終わり、深手を負っている神田はひとまず病院へ搬送された
そして今はコムイと電話で会話中……神田は自分に取り付けてある絆創膏や点滴をブチブチ取る
「ちょっと!ちょっと!何してんだい?!」
奥から医者が慌てて神田を止めるが構わず請求先を指定する
全治5ヶ月と言われていた傷は神田の言ったとおりすっかり治っていた
医者と看護婦は目を丸くして神田たちが立ち去るのを見るしかなかった
「今回のケガは時間がかかったね。神田くん」
「でも治った」
「でも時間がかかってきたってことはガタが来始めてるってことだ。計り間違えちゃいけないよ。キミの命の残量をね…」
コムイは神田に釘を指すように言った。当の神田は黙したままその言葉を聞いていた
「で、何の用だ。イタ電なら切るぞこら」
コムイに対して先ほどの返事は何もせず電話をしてきた要件を聞くために話を戻した
コムイはリーバーに訴えるが相手にされず、渋々神田に次の任務がある事を伝える
「了解。カナが近くにいるだろ。代われ」
「一応ボク、神田くんの上司なんですけどぉ!もー!」
コムイは神田にそう正論を言いながらも電話の向こうでカナを呼ぶ。間もなくしてカナの声が響いた
『ユウ?聞こえる?』
「カナ、あぁ」
『任務お疲れさま。今回は大変だったみたいね。教団に帰れないのは気が滅入っちゃうわね…次の任務も長くなるのかしら?』
神田は目を閉じてカナの声に耳を澄ます。言葉を聞きながらカナがどんな表情をして言っているのか想像する
「…ここからそう遠くない。情報も揃ってるし今回ほど長くはならないはずだ」
少し遅れて返事をする。カナの声に聞き入っていて反応が遅れた
『そう…。あまり無理はしないでちょうだいね?病み上がりなんだから。それにアレンとは初めて組んだから色々と疲れたでしょう?次の任務までにしっかり睡眠を摂るのよ?』
心配性なカナの困った顔が鮮明に浮かぶ
思わずふっと笑ってしまった
俺は子供じゃないんだと思うが、カナに言われると不思議と嫌な気持ちがしない。むしろ心が暖かくなる。本当に不思議な人だ。
「あぁ、わかってるよ。
それと、俺はアイツとは合わん!あーゆうヤツはキライだ」
電話の向こうから笑い声が聞こえる
カナの上品な笑い声が響く
『あまり笑わせないで!あなたは誰とだって合わないじゃないの!ふふ!誰と組んでも何かしらイライラしてる癖にっ』
そう言ったカナに周りは神田が何を言ったのか察しがついたのだろう。カナに釣られて笑い出す
神田はぐっと歯を噛み締めて反論する
「そんなことない!カナと組んでる時はねぇーだろ!」
『そんなことないわよ〜。この前一緒の任務だったときあなた、ものすごく怒ってたじゃない。結局なんで怒ってたの?聞いても教えてくれないし』
神田は押し黙ってしまった。
言えるわけがないだろう。カナが自分とではなくファインダー達ばかりと話していたことにイラついていたなど
ファインダー達もカナに好感を寄せているのが分かり余計にイラついていたのだ
そんなこと本人に言えるわけがない。絶対に、口が裂けても
黙秘を続ける神田にカナは微笑んだ。
『ま、この話は置いといて。きっとあなたに似ているのね…あの子』
「ンなわけねぇーだろ。あんなモヤシと一緒にすんなっ」
『そうかしら?ふふ、そう怒らないで!』
カナの言葉に図星をつかれ黙って頭を冷やす神田
そして言いたいことはこんな事じゃないと反省し神田は口を開く
「なぁおい」
『なーに?』
「帰ったら天ぷらそばが食べたい」
『…ジェリーに伝えておくわ』
「鍛練もしたい」
『ブックマンに頼まなくちゃね』
「……」
黙る神田
カナはようやく察したのか微笑んだ
『ユウが居なくて寂しいわ、早く帰って来てちょうだい』
「あぁ、すぐ帰る」
返答の速さに思わず笑ってしまう。気をつけて行ってらっしゃいと言って電話を切った
無事に帰ってこれますようにと願いを込めて
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