give

□Please call me!
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「…雲雀君」

「何?」


「また声に出してます」


「ワォ!僕ったらつい…」

「わざとですよね?明らかにわざとですよねぇ?」


わざとだったら何が悪いの。そういう目線で彼を見た。大体僕は早く目の前に広がっている書類を片付けたいんだ。用件を済ませて早く帰れば良いのに、それをしないこいつが悪い。用件、なんて僕が知るはずも無いし興味も無いけど。


「…雲雀君。一つだけ、お願いをしても良いですか?」


急に真面目な顔をして言葉を発したから、何だと思って耳をかたむけた。少しだけ切なそうに聞くものだからドキリとしてしまう。仕方ないから何なのか聞こうと思って、何、ともちろん表情は表に出さずに聞き返した。
「お願いですから、


パイナップルと呼ばないでくれませんか?」


…は?


「…それだけ?」

「それだけとは何ですか!僕にとっては重大な問題です、地球温暖化よりも」

「そんな事は無い」


温暖化よりも重大?有り得ないね。僕がさっきまでずっと考えていた問題よりも重大だなんて、おごがましい。
目の前の果実は果実で「暑いのなんてアイスでもかっ喰らいながら扇風機の前占領してれば良いんです」とか「どうせ凍えるような冬の寒さでもヤる事ヤったら熱くなるモンなんですよ」とか延々と(一人で)呟いている。うん、死になよ。


「君ってさ…


馬鹿?」

「はい!?」


思わず息を吐くと、ナポーは「馬鹿ではありません!」とか何とかギャーギャー騒いできた。煩い。奴が来たおかげで放置されたままの書類の山を横目で見ながら、欠伸をもらす。そろそろ、眠たくなってきた。

「名前とは他の物体と区別するためのものであり、それ以下でも以上でも無い。要するに君はパイナップルという以外の何物でも無いよ」

「僕は生物としても認められてないんですか」


目の前の、もう腐りかけているんじゃないかとも思う世にも不思議な喋るパイナップルは、その顔も声もいつも道理の、冗談の様なノリで話しているのに、何だかその目が切なく見えるから、嫌な気持ちになる。別にこの男が悲しもうが苦しもうが、果ては死のうが、僕には関係がない、はず。だから、きっと僕が悪いみたいで後味が悪いから、こんな気持ちになるんだ、と適当に片付けて、僕は再び口を開いた。



「第一、君の名前って何」

「そこからですか!?」


興味も無いね、と吐き捨てて、変な顔をしながら反応している奴を後目に、専用の席から立ち上がる。結局片付けられなかった書類は、明日草壁にでもやらせれば良い。何時の間にか勝手に帰ってるしね。机の物を軽く整理している僕を見て何か少し聞こえた様な気がするが、聞こえなかった事にする。


「君も早く帰ったら?


六道」


擦れ違い際に一言。発した後の彼の顔が最高に面白かったから、取り敢えず。



lease call me!



明日は二人分のアイスでも買っておこうか。




070910.渡辺章
(大体、君のその名前を忘れられる方が難しいでしょ)


ぐぴゃっのもず様に捧げる!
もず様以外のお持ち帰りは禁止です。
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