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□届け..
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語り─折原臨也─

嫌い、大嫌いなんだよ、君のことなんて。


「シーズちゃん、まぁた告白?」
体育館の裏、人目のつかないその場所で俺は見たくないものを見てしまった。
「お、折原くん!?」
俺の大嫌いなシズちゃんが、俺の大好きな人間に告白されていたのだ。
この子はたしか──

「嗚呼、君は確かこの前3年の反町先輩に告白して見事に振られ、その後1年の山田くんと身体の関係を持つことになった間宮さんじゃないか!」
俺が真実を伝えてやると間宮は目を見開き、信じられないとでもいう顔で俺を見た。

「な、なんで折原くんがそれを..」
「いきなりなんなんだよノミ..」

二人して怪訝そうな顔しちゃって..ああ愉快だなあ。

「そして、山田くんとは今も交際中。それなのに..態々人間じゃないこのシズちゃんに、告白しにきたんだ?身体目的かな?それならやめた方がいい。シズちゃんに犯されたら身体が持たないよ」

けらけらと嘲笑うように告げてやれば、シズちゃんのこめかみには血管が浮き出てきて、間宮は怯えの顔をみせ始める。

あぁ、楽しいなぁ。

「あ゙ー..その、なんだ..そういうことなら丁重に断るぜ。」
怒りを鎮めるようにあくまで冷静に言うシズちゃん。流石に女の子には手出さないか..ざーんねん。

「あ、その...す、すみませんでした!!」
間宮は被害がない内に、と頭を下げると早急にその場を去ってしまった。
シズちゃんと俺だけが、その場に残ることになる。

「手前よぉ..いったいどういうつもりなんだ?人の告白シーンを覗き見しやがって..悪趣味だな」
「あははっ悪趣味だなんてとんでもない。俺は覗き見してたんじゃなくて、たまたま見ちゃったんだよ。誰が化け物なんかをすき好んで見るかっての」
俺は体育館の壁に背をもたれかけ、訳もなくグラウンドを見詰める。
シズちゃんは何を思ったのか態々大嫌いな俺の隣まできて同じようにもたれかかると..

「恋愛って難しいな..」

そう呟いた。
え、なにそれ...まるで君、誰かに恋してるみたいだよ?ねぇ、君は化け物なんだからさ、恋なんてしちゃいけないんだよ?

そう言いたかったけど、何故か声に出せなかった。

痛い...
なんだろう..
胸が..
苦しい..

二人の間には沈黙が続き、俺はただグラウンドを駆け回る野球少年達を見つめていた。
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