その1

□ねがいごと
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「今日は七夕だぞ〜っ!!」

ルフィが楽しそうに叫んだ。

尤も、いつだってルフィは楽しそうなのだけれど。

そんなルフィに、チョッパーが興味津々で尋ねる。

「ルフィ、ルフィ、七夕って何だ?」

「棚から落ちてきた牡丹餅が食える日だぞ」

「それは棚ぼたっ」

やっぱりよく分かっていなかったルフィに、ナミが鋭いツッコミを入れる。

「七夕っていうのは、笹を飾って願い事したりするのよ」

願い事かぁ〜、と目をキラキラさせているチョッパーの隣で、ルフィは牡丹餅が食べられない、と拗ねている。

しかしすぐに開き直り、にっと笑ってナミに言った。

「じゃあ、宴やろうぜ!!」

「何であんたはそうなるのっ」

「だってよぉ、七夕って祭りなんだろ?」

にしし、と笑うルフィに、ナミは呆れたような声を出す。

「何であんたはそういうことだけ知ってるの…」

「ロビンが言ってた。なぁ、宴やろうぜー」

うーたーげ、うーたーげ、と騒ぐルフィに、チョッパーやウソップも加わって騒ぎ出した。

「あのねぇ、七夕やるにしても、肝心の笹が…」

ない、とナミが言おうとしたところで、大きな緑色の何かが横切った。

振り返ってよく見ると、それは笹を担いでいるサンジで。

「なっ、サ、サンジくん?!」

「はい?」

サンジが、にっこりと笑って振り返る。

「その笹…?」

「ああ、これですか。前の島でもらったんです」

「何でまた…」

「いや、もうすぐ七夕だってことで、無料で配ってたんですよ。で、今日は七夕だから、出してきたんです」

今までの経過をまったく知らないサンジは、無邪気に事の次第を話していく。

「よぉーっし。笹もあることだし、今日は七夕パーティーだぁー!!」

「「おーっ!!」」

再び騒ぎ出したルフィ達に、諦めてため息をついたナミだった。


***


「−で?」

宴が一段落し、ゾロはキッチンのテーブルで、縦長の紙を前に、怪訝そうな顔をしていた。

「だから、短冊」

サンジは難しい顔をしているゾロに、ペンを差し出す。

ほかのクルーにはおやつの時間に配ったのだが、ゾロは寝過ごしたために、もらい損ねていたのだ。

「俺は書かねぇぞ」

「何で」

「願い事がねぇ」

「ああ?何か一つくらいはあんだろうが」

とにかく何でもいいから書け。

と言って、サンジは甲板の方へ行ってしまった。

「……」

残されたゾロは、しばらく一人で考えていたが、やがて何かを思いつき、さらさらとペンを走らせた。


***


ゾロが甲板に出ると、クルーたちが願い事を見せ合っているところだった。

「じゃあ、ナミは何書いたんだ?」

「わたしはこれ」

じゃーん、と差し出された短冊には…

『玉の輿』

「「……」」

沈黙するクルーたちに、ナミが言う。

「何よ。何か文句あんの?」

「いや…ナミだなぁって思って」

「…なぁなぁ、ゾロは何書いたんだ?」

この微妙な空気を何とかしようと、チョッパーがゾロに言った。

「え、あ、いや、俺は…」

ゾロは慌てて短冊を持った手を引っ込める。

「何だよー、見せろよ、ゾロ」

「いや…あっ」

いつの間にか後ろにいたナミが、ゾロの短冊を手にしていた。
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